マンション外壁タイルの浮きとは?浮き率の基準・原因・調査方法

外壁タイルの浮き率には一律の法定基準がなく、築年数や浮きの分布、施工方法などを含めて判断する必要があります。また、外観に異常がなくても、タイルやモルタルの内部で浮きが進行している場合があります。
この記事では、外壁タイルの浮きが発生する原因、浮き率の計算方法、BELCAなどの参考値、経年劣化と施工不良の考え方、浮きを調査する方法について解説します。
外壁タイルの浮きとは
外壁タイルの浮きとは、タイル・張付けモルタル・下地モルタル・コンクリート躯体などの接着面が部分的に離れ、内部に隙間が生じた状態です。

浮きは時間の経過とともに範囲が広がり、膨れ・剥離を経て、最終的にタイルやモルタルの剥落につながるおそれがあります。
浮きは外壁内部に発生するため、範囲が1㎡程度まで広がっていても、外観だけでは確認できない場合があります。タイルが膨れて壁面から盛り上がっている場合は目視できることもありますが、この状態は剥落の危険性が高まっているため、緊急の対応が必要です。
マンションなどの高い位置からタイルが落下すると、歩行者や車両への第三者被害につながります。そのため、目立った外観上の異常がなくても、打診調査や赤外線調査によって浮きの有無と範囲を確認することが重要です。
外壁タイルが浮く主な原因
タイル張りの外壁は、コンクリート躯体、下地モルタル、張付けモルタル、タイルなど、温度や湿度による伸縮特性が異なる複数の材料で構成されています。
日射による温度変化、雨水による乾湿の繰り返し、地震による建物の変形などが生じると、それぞれの材料が異なる大きさで伸縮・変形します。この動きの差によって各材料の接着面に繰り返し力が加わり、付着力の弱い部分に隙間が生じることで、外壁タイルの浮きが発生します。
このように施工後の環境変化によって浮きが発生する一方、施工時に十分な付着力が確保されていなかったことが原因となる場合もあります。主な施工上の原因には、下地表面の状態や清掃、水湿し、モルタルの調合・塗り厚さ、養生などの不備が挙げられます。
| 大分類 | 小分類 |
|---|---|
| 下地の表面層の強度不足 | ・下地の表面層の強度不足による接着不良 ・下地面の清掃の不良による接着不良 ・下地面への剥離剤付着による接着不良 |
| 下地の水湿し不良 | ・下地面の水湿しの不足による接着不良 ・施工時の無養生による接着不良 |
| モルタルの調合、塗り厚さの不適 | ・モルタルの調合の不適による収縮過大と接着強度の不足 ・モルタルの塗り厚さ過大による収縮 |
| 下地の変形 | ・下地の変形 |
外壁タイルの浮き率と基準
浮き率の計算方法
外壁タイルの浮き率は、調査対象となるタイル面積に対して、浮きが確認された面積が占める割合を示したものです。次の計算式で算出します。
浮き率(%)=浮き面積(㎡)÷調査対象タイル面積(㎡)×100
例えば、調査対象となるタイル面積が3,000㎡、浮き面積が90㎡の場合は、次のようになります。
90㎡÷3,000㎡×100=3%
この場合、建物全体の外壁タイル浮き率は3%です。
調査対象タイル面積には、原則として窓や扉などの開口部、塗装面、金属パネルなどの非タイル部分を含めません。建物全体の浮き率だけでなく、方角や壁面ごとに算出すると、浮きが集中している場所や劣化傾向を把握しやすくなります。
打診調査では、浮きが確認された範囲を損傷図へ記録して面積を集計します。赤外線調査では、熱画像から浮きの可能性があると判定した範囲を抽出し、それぞれの面積を集計して浮き率を算出します。
BELCAによる浮き率の参考値
BELCA(ロングライフビル推進協会)の外壁タイルの浮き率の基準では、築年数×0.6%の浮きがあると重大な過失と判断します。5年で3%、10年で6%を超えると施工に問題があると考えます。
タイルの浮き率については、国交省が明確な数値を示しておらず、各機関ごとに提言する数値が異なります。
浮き率の施工不良のときに引き合いに出される指標は以下の通りです。
| BELCA(ロングライフビル推進協会) | 5年で3%(0.6%/年) |
| マンション管理業協会 | 14.5年で7%(0.48%/年) |
一般的に健全に施工された建物でも10年経過すると、0~3%程度のタイルが浮くのは許容範囲と考えられます。
浮き率から施工不良を判断できるのか
経年劣化と施工不良の見分け方
『防水ジャーナル』2015年12月号には、有限会社鈴木哲夫設計事務所の鈴木哲夫氏による、外壁タイルの浮き率に関する検証結果が掲載されています。
この検証では、施工不良が確認された物件は0.46%で、施工不良が確認されなかった物件の0.19%と比べて約2.4倍でした。10年分に換算すると、それぞれ4.6%と1.9%になります。
| 健全施工と不良施工の混在 | 0.35%/年 |
| 施工不良がある | 0.46%/年 |
| 施工不良がない | 0.19%/年 |
| どちらとも確認できないあいまいな物件 | 0.25%/年 |
鈴木氏は、BELCAなどで示される年間0.48~0.6%程度の数値には施工不良のある建物が含まれている可能性があり、健全な施工による経年劣化の基準として採用する根拠にはなりえないと指摘しています。
タイル浮きが争点となった裁判例
モルタル下地にタイルを施工したRC造の事務所ビルで、竣工から5年8か月後に7.4%の浮きが確認され、元請施工会社が下請のタイル工事会社に損害賠償を求めました。
2018年2月14日の大阪地方裁判所判決では、浮きの具体的な発生原因を特定できなかったものの、築年数に対して浮き率が著しく高いことから施工不良を推認し、下請のタイル工事会社に約410万円の支払いを命じました。
本件を担当した髙嶋卓裁判官は、判決前年に発表した論説『外壁タイルの瑕疵と施工者の責任』で、施工上の不良を推認する目安として次の数値を示しています。
| 竣工から | 浮き・剥落率 |
| 5年以内 | 0%以上 |
| 5年超10年以内 | 3%以上 |
| 10年超15年以内 | 5%以上 |
| 15年超20年以内 | 10%以上 |
本件では、竣工から5年8か月後の浮き率が7.4%であり、上記の目安である3%を大きく上回っていました。
ただし、この数値は法令や裁判所が定めた一律の判定基準ではありません。浮き率を超えただけで施工不良が確定するものではなく、実際には浮きの範囲や分布、施工方法、施工記録などを含め、個別の状況に基づいて判断されます。
参考:日経クロステック「浮き率」で施工不良を推認 重くなるタイル剥離の法的責任
外壁タイルの浮きを調査する方法
外壁タイルの浮きを調査する方法は、主に「打診調査」と「赤外線調査」の2種類です。それぞれ確認方法や適用条件が異なるため、調査目的や建物の状況に合わせて選択します。
調査方法ごとの費用については、マンションの外壁調査費用で詳しく解説しています。
打診調査

打診調査は、打診棒やテストハンマーでタイル表面を打撃・転がし、そのときに発生する音の違いから浮きを確認する方法です。
調査員がタイルに直接触れて確認するため、一枚単位で浮きの有無を判定し、浮きの位置をマーキングできます。調査結果を損傷図へ記録して面積を集計することで、浮き数量や浮き率の算出も可能です。
高所の調査には足場、高所作業車、ゴンドラ、ロープアクセスなどが必要になります。特に改修工事に使用する正確な補修数量を把握したい場合は、打診調査が適しています。
赤外線・ドローン調査
赤外線調査は、外壁表面の温度分布を赤外線カメラで撮影し、周囲と異なる温度を示す範囲から浮きの可能性がある箇所を抽出する方法です。

タイル内部に隙間が生じると、健全部分と熱の伝わり方が異なるため、日射によって外壁が温まる過程や冷える過程で表面温度に差が現れることがあります。
赤外線カメラを搭載したドローンで調査すれば、足場を設置せずに高所を含む広範囲の外壁を調査できます。一方で、日射、外気温、風、壁面の方角、周辺建物の影などに影響されるため、すべての建物や壁面に適用できるわけではありません。
赤外線調査で判定が難しい壁面や、剥落の危険性が疑われる箇所については、打診調査を併用して確認します。
大規模修繕前にタイルの浮きを調査する理由
マンションの大規模修繕では、足場を設置してから外壁全面の打診調査を行い、実際に補修するタイルの位置と数量を確定するのが一般的です。
そのため、工事前の見積りでは、手の届く範囲の打診結果や過去の実績をもとに、仮定した浮き率で補修数量を算出する場合があります。
手の届く範囲の打診とは、地上から確認できる部分のほか、廊下、階段、立入り可能な住戸のバルコニーなど、足場を設置せずに調査員が直接確認できる範囲を打診する方法です。
ただし、外壁面積の約50%を打診していても、全面調査の結果と浮き率に2~3倍の差が生じる場合があります。廊下やバルコニー側では浮きが少なくても、手の届かない妻面などに広範囲の浮きが集中していることがあるためです。
足場設置後の全面打診で想定以上の浮きが判明すると、追加工事費の発生、工期の延長、修繕範囲の見直しが必要になります。
ロープアクセスによる全面打診を行えば、足場を使用せず、浮きの位置と数量を確認することも可能です。
タイル浮き調査の費用と実施事例
ローンメイトでは、マンションを対象にドローン赤外線調査を実施し、外壁タイルの浮き面積と浮き率を算出した事例があります。具体的な調査内容や費用については、マンションのドローン赤外線調査事例をご覧ください。
まとめ
外壁タイルの浮きとは、タイルやモルタルなどの接着面が離れ、内部に隙間が生じた状態です。放置すると剥離・剥落につながるおそれがあるため、目視だけでなく打診調査や赤外線調査による確認が必要です。
浮き率には一律の法定基準がなく、築年数や浮きの分布、施工方法などを含めて判断します。改修数量を正確に確定する場合は打診調査、足場を設置せず広範囲の浮きを把握する場合は赤外線調査が適しています。
外壁タイルの浮き調査をご検討中の場合は、建物の形状や調査目的に応じて、打診調査とドローン赤外線調査を組み合わせてご提案します。ドローンによる赤外線外壁調査の詳細はこちらをご覧ください。
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