ドローン赤外線調査が向いていない建物や壁面の特徴|傾向と対策

街中を飛行するドローン

ドローン赤外線調査は、無足場・短工期で広範囲を確認できる調査方法ですが、すべての建物に適しているわけではありません。

建物形状・隣棟間隔・仕上げ材・日射条件によっては、赤外線調査の精度が低下したり、飛行調整が難しくなるケースがあります。

特に、

  • 北面や陰面
  • 隣接建物との距離が近い建物
  • 光沢の強いタイル
  • 近隣上空飛行が必要な建物

などは、事前検討が重要になります。

この記事では、ドローン赤外線調査が向いていない建物や壁面の特徴について、実際の調査経験をもとに解説します。

ドローン赤外線調査が向いていない壁面

隣の建物との距離が近い

隣接建物との距離が近い場合、ドローンによる赤外線調査が難しくなるケースがあります。

一般的には、外壁から10m前後の離隔があると撮影しやすくなります。理由は以下の通りです。

  • 外壁に近すぎると画角が狭くなり、撮影位置や異常箇所の位置関係が分かりにくくなる
  • 赤外線調査は健全部との温度比較で解析するため、撮影範囲が狭いと判断が難しくなる
  • 外壁に近づきすぎると、障害物検知センサーの影響や気流の乱れにより、操縦難易度や接触リスクが上がる
  • 隣接建物の影がかかりやすく、温度差が発生しにくくなる
距離ドローンによる赤外線調査外壁からの距離
6m未満近すぎて撮影・解析が困難
7m~8m撮影可能だが撮影枚数が増えやすい
9m~12m比較的調査しやすい
12m~理想的な条件

ただし、赤外線調査は水平45度まで撮影できるため、建物が小規模の場合は撮影できるケースも多いです。

仕上げ材との相性が悪い

赤外線調査は放射の温度を取得して、解析するため仕上げ材によって調査精度が変わります。以下は仕上げ材の特徴による相性をまとめた表です。

仕上げ材の特徴相性対策
光沢が強いタイル△〜×釉薬の光沢により反射の影響を受けやすい。ラスタータイル等は調査不可となる場合あり。別角度から撮影し、反射の影響を比較確認する
不規則な凹凸のタイル表面形状による温度ムラが出やすい条件により夜間撮影も検討
深め目地熱の伝導に時間がかかる外壁温度が十分に上がったタイミングで撮影
グレー系タイル日射条件の影響を受ける太陽高度・太陽方位を確認し、外壁が温まる時間帯に撮影
ベージュ系タイル比較的解析しやすい対策不要
黒系のタイル温度差が出やすく、赤外線調査と相性が良い対策不要
塗装(コンクリート)比較的解析しやすい対策不要

これらの要素は単独ではなく、複数の条件が重なった結果として調査精度に影響します。

例えば、
「光沢が強い」「白系」「凹凸が大きい」タイルの場合、

  • 光沢による反射
  • 白系特有の温度上昇の弱さ
  • 凹凸による温度ムラ

が同時に発生するため、浮き部と健全部の温度差が出にくくなり、赤外線調査では浮きを検知しにくくなる傾向があります。

一方で、

  • 仕上げ材の色が濃い
  • 光沢が少ない
  • フラットな仕上げ

のような外壁は温度差が現れやすく、赤外線調査との相性が良い仕上げ材といえます。

実際の検知率や、打診調査との精度の違いについては、赤外線調査の精度の記事で詳しく解説しています。

北面・陰面

赤外線調査は、日射によって外壁温度が上昇したタイミングで撮影し、健全部と浮き部の温度差から浮き箇所を特定する調査方法です。

そのため、日射が当たりにくい北面や陰面では外壁温度の上昇が小さく、他の壁面と比べて検知精度が下がる可能性があります。

赤外線調査で劣化が分かるメカニズム

ただし、北面であっても北東寄り・北西寄りの壁面については、6月〜8月頃であれば時間帯によって日射が当たる場合があります。その場合は、外壁温度の上昇が見込めるため、浮きの検知精度は高くなります。

7月1日の日射状況と建物の向きによって赤外線調査の相性を〇×△で表した表

全面をドローン赤外線調査で確認する場合、北面や陰面については、日射ではなく気温上昇による温度変化を利用し、11時〜12時頃に撮影する方法が現実的です。

ただし、この場合の検知精度は、日射が直接当たる壁面と比べると低下する可能性があります。そのため、北面や陰面でコストよりも精度を重視する場合は、ロープアクセス等による打診調査を併用することが望ましいです。

赤外線調査では、建物の向きや季節によって、調査しやすい時間帯や精度が大きく変わります。建物の向きごとの最適な調査時期については、「赤外線外壁調査は何月からできる?」の記事で詳しく解説しています。

第三者が所有する土地の上空の飛行が必要な場合

ドローン外壁調査では、建物との離隔距離を確保しながら撮影を行う必要があります。

そのため、対象建物と隣接建物の距離が近い場合、必要な撮影距離を確保できず、近隣建物の上空を飛行しなければ撮影できないケースがあります。

第三者が所有する土地上空の飛行については、航空法上で一律に禁止されているわけではありません。

民法においては,「土地の所有権は,法令の制限内において,その土地の上下に及ぶ。」(第 207 条)
と規定されているが,その所有権が及ぶ土地上の空間の範囲は,一般に,当該土地を所有する者の「利益の存する限度」とされている。このため,第三者の土地の上空において無人航空機を飛行させるに当たって,常に土地所有者の同意を得る必要がある訳ではないものと解される。

無人航空機の飛行と土地所有者の権利〜第三者所有地の上空利用についての法的整理〜

ただし、ドローン外壁調査は低空飛行となるケースが多く、壁面1面の撮影に5分〜30分程度を要する場合があります。

そのため、近隣建物の上空を継続的に飛行する場合、居住者や利用者に不安を与える可能性があるため、弊社では原則として事前説明や許可取得が必要であると考えています。

弊社の経験上、飛行許可や関係者調整に要する期間は、

公共施設 < 商業施設(店舗)< 一般住宅 < マンション管理組合

の順で難易度が上がる傾向があります。

特にマンションやオフィスビルでは、管理組合・オーナー・管理会社・入居者など複数の関係者との調整が必要になるため、許可取得や事前説明に時間を要するケースがあります。

弊社が分譲マンション敷地上空の飛行調整を行った際には、管理会社への飛行計画書の送付や、調査1週間前に各住戸へ1戸ずつ事前通知書投函などを実施したケースもあります。

もし許可取得や関係者調整が困難な場合は、ドローン赤外線調査ではなく、ロープアクセスによる打診調査を選定した方が適している場合があります。詳しくは外壁調査の方法と選び方の記事で解説しています。

無足場・短工期で打診できるロープ打診で補完

赤外線調査で精度確保が難しい壁面については、ロープアクセスによる打診調査や廊下・バルコニーからの打診で補完を行う場合があります。

ロープアクセス打診は、屋上からロープで降下しながら外壁を直接打診する調査方法です。

足場を設置せずに調査できるため、

  • 仮設費用を抑えやすい
  • 短工期で対応しやすい
  • 部分調査に対応しやすい

といった特徴があります。

特に、以下条件の場合ロープアクセスによる打診調査の方が適している場合があります。

  • 北面や陰面
  • 隣棟間隔が狭い壁面
  • 近隣上空飛行が難しい建物
  • 赤外線調査で判定が難しい箇所

コスト面に関してはドローン赤外線調査よりも1.5倍程度費用がかかりますが、精度を重視される方はロープアクセスを組み合わせての調査をおすすめしております。

弊社では、ドローン赤外線調査だけに限定せず、建物条件や調査目的に応じて調査方法を選定しています。

「この建物はドローンで調査できるのか」「赤外線調査と打診調査のどちらが適しているのか」など、建物条件に応じた具体的な検討については、下記よりお気軽にご相談ください。

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