外壁調査の方法と選び方|目的に合わせた選定方法

外壁調査の方法と選び方

外壁調査には、「赤外線調査」と「打診調査」という代表的な手法がありますが、どちらを選ぶべきかは建物の状況や調査の目的によって決まります。例えば、

  • 改修費用を正確に算出したいのか
  • 足場を組むべきか判断したいのか
  • 定期点検として全体の状態を把握したいのか

これらが曖昧なまま調査を実施すると、
「数量が合わない」「設計に使えない」「無駄な足場を組んだ」
といったミスマッチが発生します。

本記事では、外壁調査の主な手法の違いと特徴を整理したうえで、目的別に最適な調査方法の選び方と実際の考え方を解説します。

目次

外壁調査の主な方法

外壁調査には、主に「打診調査」と「赤外線調査」の2つがあります。それぞれの特徴を整理すると以下のとおりです。

調査方法精度コスト日数単価の傾向
打診調査高い(数量把握が可能)高い(仮設費が必要)長い(数日〜数週間)面積×1㎡単価で積算されるケースが多い
赤外線調査(ドローンを含む)日射条件・仕上げ材との相性に左右される低い(仮設不要)短い(1日〜数日)調査面積が大きいほど㎡単価は下がる傾向

低コストの赤外線調査(ドローン含む)

反射率が低い仕上げ材の浮きの赤外線画像

赤外線調査は、外壁表面の温度分布を撮影し、浮きや剥離によって生じる温度差から異常箇所を判定する調査方法です。
ドローンを併用することで、高所でも足場を設けずに広範囲の確認が可能なため、短期間・低コストで把握する一次調査として有効です。

一方で、以下のような特徴があります。

  • 日射条件(方位・時間帯・季節)により精度が変動する
  • すべての浮きを網羅的に検知できるものではない
  • 浮き面積が大きく、剥落リスクが高い箇所ほど検知しやすい傾向がある
  • 仮設(足場等)が不要なため、調査コストを抑えやすい
  • 定期点検や大規模建物における一次調査として有効
  • 面積が大きいほど㎡単価は下がる傾向がある
  • 外壁改修の要否や、足場設置の必要性の判断材料として活用できる
  • 5000㎡の建物でも1日で現地調査が完了する
  • 調査員の赤外線の理解、経験により調査結果が異なる

「広く・早く・コストを抑えて全体傾向を把握する調査」と言えます。

赤外線調査は、撮影条件や解析経験によって検知精度が大きく変わります。実際の検知率や、打診調査との違い、精度に差が出る理由については、「赤外線調査の精度」の記事で詳しく解説しています。

改修設計に使える打診調査

労働安全衛生法第539条に準拠し2本のロープで高所作業を行う調査員

打診調査は、打診棒などで外壁を叩き、音の違いから浮きや剥離の有無を判定する調査方法です。
調査員が外壁に近接して確認するため、劣化状況を直接把握でき、改修設計に必要な劣化数量を正確に把握するための調査です。

主な特徴は以下のとおりです。

  • 改修設計における劣化数量の把握に用いられる代表的な手法
  • 仮設(足場・ゴンドラ・ロープ・高所作業車等)が必要となり、コストは高くなる傾向がある
  • 足場打診は最も精度が高く、数量把握に適している
  • 高所作業車やロープアクセスや2mなどの長尺打診棒で調査した場合は仮設費を抑えられる一方、後工程で数量が増える傾向がある
  • 面積が大きくなるほど総コストは増加する
  • 打音による判定のため、作業者の経験・年齢・疲労により検知精度に差が生じる

打診調査は劣化数量を把握し、改修設計につなげるための調査です。

外壁調査の目的別の手法

外壁調査の目的別図解

外壁調査は、目的によって求められる精度や調査範囲が異なるため、赤外線調査と打診調査を適切に使い分けることが重要です。

  • 12条点検 → 赤外線+必要箇所の部分打診
  • 足場要否の判断 → 赤外線+必要箇所の部分打診
  • 精度(改修設計) → 打診調査
  • 施工前確認 → 足場打診

①10年に1度の建築基準法第12条点検(定期報告)

建築基準法第12条に基づく定期報告では、外壁の仕上げがタイル・モルタル等の場合、竣工後10年を目安に全面的な打診等による調査が必要とされています。

近年では、調査の効率化や安全性の観点から、国土交通省によりドローンを活用した赤外線調査も認められています。定期報告制度における外壁のタイル等の調査について(国土交通省)

ドローンによる赤外線調査は、足場を設けずに広範囲を短期間で確認できる点が特徴です。

  • 仮設が不要なため、調査コストを抑えやすい
  • 大規模施設でも1~2日程度で調査が完了するケースが多い
  • 調査面積が大きいほど、㎡単価は低減しやすい

そのため、大規模建物や定期点検における一次調査として有効な手法とされています。

一方で、外壁面積が小さい場合(目安:800㎡程度以下)では、ロープアクセス等による打診調査と費用差が小さくなる場合があります。このような場合は、

  • 調査精度を重視する場合 → 打診調査
  • 劣化傾向の把握を目的とする場合 → 赤外線調査

といったように、目的に応じて手法を選定することが重要です。

②足場を組むかの判断材料

外壁改修においては、足場の設置が大きなコストを占めるため、改修の必要性を一次調査で判断するケースがあります。

例えば、築14年以上経過した建物であっても、PC板(プレキャストコンクリート)の外壁の場合、タイル仕上げ等と比較して浮きやひび割れの発生が少ないケースがあります。

こうした場合には、一次調査として赤外線調査および手の届く範囲での打診調査を実施し、建物全体の劣化傾向を把握したうえで、改修の要否を検討する方法が有効です。

実際の事例として、管理組合およびコンサルティング業者からの依頼により、外壁の劣化傾向を事前に調査した結果、浮きが極めて少ないことが確認され、大規模修繕の実施時期を数年先送りできたケースもあります。

一次調査では、コストを抑えつつ建物全体の傾向を把握することが求められるため、

  • 広範囲を短期間で確認できるドローンによる赤外線調査
  • 地上から可能な範囲での打診調査
  • 必要に応じたロープアクセスによる部分的な打診調査

といった手法を組み合わせて実施するのがよいでしょう。

③改修のための劣化数量の把握

外壁改修においては、補修範囲や工事費を算出するために、劣化数量を正確に把握することが重要です。

改修を前提とする場合には、浮きの数量(㎡・枚数)の把握が求められます。さらに、浮きの面積が0.25㎡未満か以上かによってアンカーピンニング工法の適用範囲が変わり、単価にも差が生じます。(二丁掛タイルでは16枚未満か以上か)

数量の違いがそのまま施工方法やコストに直結するため、改修設計においては実態に即した精度の高い調査が前提となります。

数量の把握は打診調査で行うのが基本です。ロープアクセスや足場を用いて外壁に直接接触し、打音によって浮きの有無や範囲を確認することで、数量を実態に近い形で把握することが可能となります。

一方で、ドローンによる赤外線調査は、建物全体の浮きの分布や傾向を把握する用途には適していますが、すべての浮きを検知できるものではなく、数量を厳密に確定する用途には適していません。

高温表示になっているタイル枚数から面積を出すことはできますが、高温表示の周辺も浮いている場合があるため、改修のための劣化数量把握には不向きです。

④定期点検の場合

建物によっては、建築基準法第12条点検とは別に、維持管理の一環として定期的に外壁点検を実施しているケースがあります。

例えば、毎年または3年ごとに、ゴンドラや足場を用いた打診調査・目視調査を実施し、劣化の進行状況を継続的に確認する運用です。

このような維持管理を目的とした定期点検では、建物規模や目的に応じて手法を使い分けることが重要です。

  • 小規模建物や精度を重視する場合
     → ロープアクセスによる打診調査
  • 大規模建物や広範囲を効率的に確認したい場合
     → ドローンによる赤外線調査

また、定期点検では毎回同じ手法を繰り返すだけでなく、赤外線調査と打診調査を組み合わせて運用する考え方も有効です。

例えば、前回は赤外線調査、次回はロープアクセスによる打診調査とすることで、各手法の特徴を補完しながら、例えば赤外線調査では水分の滞留等、打診では浮き率等、単一手法では把握しづらい結果を確認しやすくなります。

目的別の報告書に必要な内容

調査の目的によって、報告書に求められる内容は異なります。

目的と成果物が一致していないと、調査後に「改修設計に使えない」「必要な情報が不足している」といったミスマッチが生じることもあるため、調査を依頼する際は、事前に報告書の内容を確認が必要です。

損傷図劣化数量タイル浮き率写真台帳調査の概要
改修時の劣化数量把握
定期報告(12条点検)
ガイドライン上必須ではない

ガイドライン上必須ではない
足場の要否の判断必要に応じて必要に応じて
定期点検必要に応じて必要に応じて

目的にあった外壁調査の方法を

外壁調査で最も重要なのは、「どの方法が優れているか」ではなく、目的に対して適切な手法を選ぶことです。

・広範囲を早く予算を抑えて把握したい → 赤外線調査
・改修設計に使う数量が必要 → 打診調査
・足場の要否を判断したい → 赤外線+部分打診

このように、調査手法は使い分ける前提で考える必要があります。

しかし実際には、建物の形状・高さ・周辺環境・仕上げ材の種類、さらには吊元の確保可否やドローンの飛行条件など、机上では判断できない要素が多く、専門的な判断が不可欠です。

ドローンメイトでは、ドローンによる赤外線調査とロープアクセス等による打診調査の両方に対応しており、
目的や建物条件ごとに最適な調査手法をご提案しています。

調査方法の選定段階からご相談いただけますので、お気軽にお問い合わせください。

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