外壁タイルの浮きは経年劣化によって発生するため、竣工から十年経過すれば健全な施工でも2~3%浮くのは許容範囲とされます。
しかし、工期短縮のためにコンクリートの目荒らしや粉じんの洗浄といった工程が抜けている場合、浮き率が10%を越える場合があります。
浮き率は打診調査や赤外線外壁調査(ドローンによる赤外線外壁調査を含む)で調査することが可能です。
この記事では、外壁調査事業を展開している『ドローンメイト』が、外壁タイルの浮き率の基準について解説します。
外壁タイルの浮き率の基準
BELCA(ロングライフビル推進協会)の外壁タイルの浮き率の基準では、築年数×0.6%の浮きがあると重大な過失と判断します。5年で3%、10年で6%を超えると施工に問題があると考えます。
タイルの浮き率については、国交省が明確な数値を示しておらず、各機関ごとに提言する数値が異なります。
浮き率の施工不良のときに引き合いに出される指標は以下の通りです。
BELCA(ロングライフビル推進協会) | 5年で3%(0.6%/年) |
マンション管理業協会 | 14.5年で7%(0.48%/年) |
一般的に健全に施工された建物でも10年経過すると、0~3%程度のタイルが浮くのは許容範囲と考えられます。
鈴木哲夫氏による浮き率の検証結果
「防水ジャーナル(2015年12月号)」では、(有)鈴木哲夫設計事務所の鈴木哲夫氏によるタイルの浮き率の検証結果が掲載されています。
健全施工と不良施工の混在 | 0.35%/年 |
施工不良がある | 0.46%/年 |
施工不良がない | 0.19%/年 |
この検証結果によれば、施工から10年経過で1.9%程度の浮き率は健全、4.6%を超える浮き率は施工不良という基準になります。
外壁タイルの浮き率を調査する方法
外壁のタイルの浮き率を調査する手法は、主に打診調査と赤外線調査の2種類があります。
打診法 | ・足場 ・ゴンドラ ・高所作業車 ・ブランコ等 |
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赤外線法 | ・地上赤外線 ・ドローン赤外線 |
赤外線法と打診法の各違いについてはこちらで解説しています。
打診調査
打診調査は、打診棒やテストハンマーを外壁に当てて転がす際に出る音によって浮きを見つける調査方法です。
健全なタイルはカラカラと高い音がしますが、躯体とモルタルの界面が浮いているとゴロゴロと低い音がします。
打診調査はシンプルですが、一枚ずつタイルの浮きをチェックできるため精度が高い調査法です。
打診調査を行う際は、足場やゴンドラなどの仮設工事が必要になるため、改修工事を前提として調査を実施します。
赤外線調査
赤外線調査は、赤外線カメラを搭載したドローン等で、外壁の温度差を利用して浮きを検出する手法です。
下の画像のように、肉眼では見えない浮きが赤外線カメラで撮影した画像によって可視化できます。
赤外線調査は、高温表示の箇所の面積を計測できるため、以下のように1箇所ずつ外壁タイルの浮きを算出して集計することにより全体の浮き面積を出せます。
ドローンによる赤外線外壁調査は、仮設工事を必要とせず外壁全面を低コストで調査できるため、足場を組まない定期報告等の用途で近年注目されており自治体も導入している調査方法です。
赤外線調査についてはこちらで詳しく解説しています。
施工不良(瑕疵)の可視裁判の事例
モルタル下地にタイルを施工したRC造の事務所ビルで、築5年8ヶ月に7.4%の浮きが発生し、原告である元請け施工会社は、下請けのタイル工事会社を訴えました。(日経クロステック『「浮き率」で施工不良を推認 重くなるタイル剥離の法的責任』)
、2018年2月14日に大阪地方裁判所は、原告である元請け施工会社の訴えを一部認め、被告の下請けタイル工事会社に約410万円の損害賠償を支払うよう命じました。
この判決を言い渡した高橋卓裁判官は、判例タイムズ17年9月号で以下のように判定の目安を提案していたようです。
竣工から | 浮き・剥落率 |
5年以内 | 0%以上 |
5年超10年以内 | 3%以上 |
10年超15年以内 | 5%以上 |
15年超20年以内 | 10%以上 |
外壁タイルが施工不良の問題は、当事者間の交渉による解決が難しいと言われますが、今後、浮き率が一定の基準を超えると施工不良となる判決が一般化する可能性もあるようです。
外壁タイルの浮き率に関するよくある疑問
- タイルの補修費用の相場は?
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大規模修繕工事でタイルの補修に係る費用は、アンカーピンニング工法によう1㎡(16穴)あたり5,760円。タイルの撤去代を含めた張り替えは、磁器質タイルが1枚860円~990円、1平米あたり61,900~80,800円が目安です。(積算資料マンション修繕編より引用)
ドローン赤外線外壁調査なら事前にタイルの浮き率を調査
大規模修繕の積算する場合、大体2~3%、20年以上経過している物件であれば5%の浮き率で算出して見積り・契約を行います。
しかし、足場を組んだ後に施工不良が発覚し、相当な浮きがあったばあい工期の延長や追加工事で費用が発生するケースもあります。その場合、一時的に徴収や借入、工事のダウングレード等の対応が必要です。
ドローンによる赤外線調査であれば、足場を組む前に外壁の全面調査が可能なため、事前にタイル浮きを調査できます。
外壁タイルの調査をご検討中であれば、無料で概算見積りを作成しますので、お気軽にドローンメイトまでご相談ください。