建物のドローン点検とは?外壁で確認できる劣化・費用・注意点

「ドローン点検では、建物や外壁のどこまで確認できるのか」「赤外線調査だけでタイルの浮きが分かるのか」と疑問に感じていませんか。
ドローンによる建物点検では、可視光カメラで外壁のひび割れや欠損を確認できるほか、赤外線カメラを使ってタイルやモルタルの浮きが疑われる範囲を調査できます。
一方、バルコニー内部など撮影が難しい箇所もあり、正確な浮きの確認には打診調査が必要です。
本記事では、ドローン点検で確認できる劣化と確認できない箇所、費用、調査期間、12条点検や大規模修繕での活用方法について、ドローン赤外線調査とロープ打診調査を行う専門会社が解説します。
ドローン点検とは

ドローン点検とは、ドローンに搭載したカメラを使用して、建物の外壁や屋根などを撮影し、劣化や損傷の有無を確認する調査方法です。
従来、高所の建物点検には仮設足場、高所作業車、ゴンドラなどが必要でした。ドローンを活用することで、足場を設置する前の段階でも高所を撮影できるため、建物全体の劣化傾向を短期間で把握できます。
建物のドローン点検は、主に次の2種類に分けられます。
- 可視光カメラによる目視点検
- 赤外線カメラによるサーモグラフィ調査
目視点検では、外壁表面に現れているひび割れや欠損などを確認します。一方、サーモグラフィ調査では、外壁表面の温度分布を撮影し、目視では発見しにくいタイルやモルタルの浮きを調査します。
ただし、ドローン点検だけですべての劣化を確認できるわけではありません。建物の形状や調査目的に応じて、打診調査や近接目視調査を組み合わせることが重要です。
可視光カメラによる目視点検
可視光カメラによる目視点検では、高解像度カメラを搭載したドローンで建物を撮影し、外壁表面に現れている劣化や損傷を確認します。

主に確認できる劣化は次のとおりです。
- 外壁のひび割れ
- タイルやモルタルの欠損
- コンクリートの爆裂や鉄筋露出
- 白華現象や錆汁
- 塗膜の剥がれや膨れ
- シーリング材のひび割れや破断
ドローンを使用すると、地上からの目視や双眼鏡では確認しにくい高所部分も、外壁に近い位置から撮影できます。撮影した画像を保存できるため、劣化箇所を写真台帳や損傷図に整理し、修繕計画の資料として活用することも可能です。
可視光カメラで確認できるのは、基本的に外壁表面に現れている劣化です。外観上は異常がなくても、タイルや下地モルタルの内部に浮きが発生している場合があります。そのため、内部の浮きを調べる場合は、赤外線カメラによる調査や打診調査を行います。
赤外線カメラによるサーモグラフィ調査

サーモグラフィ調査とは、赤外線カメラで外壁表面の温度分布を撮影し、目には見えないタイルやモルタルの浮きが疑われる範囲を確認する調査方法です。
外壁に浮きが発生すると、仕上げ材と下地の間に空隙が生じます。空隙がある部分は健全部と熱の伝わり方が異なるため、日射などによって外壁の温度が変化すると、表面温度の差として赤外線画像に現れることがあります。
ドローンに赤外線カメラを搭載することで、地上からでは適切な角度で撮影しにくい高所の外壁も、正面に近い位置から撮影できます。広い外壁面を効率よく調査できるため、建築基準法第12条に基づく外壁全面調査や、大規模修繕前の劣化状況確認などに活用されています。
ただし、サーモグラフィ調査の結果は、日射、気温、風、雨、壁面の方位、撮影角度、仕上げ材などの影響を受けます。また、赤外線画像に温度差が写っていても、そのすべてが浮きとは限りません。
そのため、赤外線の技術者が可視画像と赤外線画像を照合したり、打診で整合性をチェックしながら調査を行います。
建物・外壁のドローン点検で確認できる劣化
建物や外壁のドローン点検では、高解像度の可視光カメラと赤外線カメラを使い分けることで、外観に現れている損傷だけでなく、外壁内部の浮きが疑われる箇所も調査できます。
ただし、ドローンだけですべての劣化を確定できるわけではありません。撮影条件や建物の状態に応じて、打診調査やロープアクセスによる近接調査を組み合わせることが重要です。
ひび割れ・欠損・爆裂などの外観劣化
可視光カメラによる点検では、外壁や屋上などに生じた次のような外観劣化を確認できます。
- コンクリートやモルタルのひび割れ
- 外壁タイルの割れや欠損
- コンクリートの爆裂や鉄筋の露出
- 塗膜の剥がれや膨れ
- エフロレッセンス(白華現象)
- 錆汁や漏水の跡
- シーリング材のひび割れや剥離
足場や高所作業車を使わなければ確認しにくい高所でも、ドローンであれば近距離から撮影できます。撮影した画像を保存しておくことで、劣化箇所を写真台帳や図面に整理し、修繕計画や経過観察にも活用できます。
ただし、画像から確認できるのは、基本的に表面へ現れている変状です。細かなひび割れ幅の測定や損傷の深さを正確に判断する場合は、近接目視や直接測定が必要になります。
外壁タイルやモルタルの浮き等の内部劣化
赤外線カメラによるサーモグラフィ調査では、外壁タイルやモルタルの浮きが疑われる範囲を調べられます。
外壁材が下地から浮くと、その間に空気層が生じ、健全部とは熱の伝わり方が異なります。日射などによって外壁の温度が変化する際、この違いが表面温度の差として現れることがあり、赤外線画像から異常箇所を推定します。
ただし、赤外線カメラで外壁内部を直接見ているわけではありません。日射や日陰、雨水、反射、外壁の材質なども表面温度に影響するため、温度差がある箇所のすべてが浮きとは限りません。
そのため、赤外線画像と可視光画像を照合したうえで、必要に応じて打診調査やロープアクセスによる近接調査を行います。ドローンで広範囲を効率よく確認し、浮きが疑われる箇所を絞り込むことで、その後の詳細調査や修繕計画を進めやすくなります。
ドローン点検だけでは確認できないこと
ドローン点検は、高所や広範囲の外壁を効率よく確認できる一方、建物の形状や周辺環境によっては撮影できない箇所があります。また、画像から確認できる情報には限界があるため、調査の目的によっては近接目視や打診調査との併用が必要です。
バルコニー内部など撮影が難しい箇所

ドローンは建物の外側から撮影するため、バルコニーの内部や軒裏、庇の下面など、外部から見えにくい箇所の確認には向いていません。次のような場所では、十分な撮影ができない場合があります。
- バルコニーや共用廊下の内部
- 軒裏や庇の下面
- 建物同士の間隔が狭い場所
- 電線や樹木などの障害物がある場所
- 隣接地へ立ち入らなければ確認できない外壁
- 室外機や看板などで隠れている箇所
無理に建物へ接近すると、ドローンが壁面や障害物へ接触するおそれがあります。そのため、飛行経路や安全距離を確保できない部分については、地上からの目視や高所作業車、ロープアクセスなど、別の方法で補完します。
打診調査による確認が必要なケース
ドローンによる赤外線調査では、仮設足場やゴンドラを使用せず、高所にある外壁タイルやモルタルの浮きが疑われる範囲を効率的に調査できます。
一方、北面など日射が当たりにくい外壁では、健全部と浮き部に十分な表面温度差が生じず、判定精度を確保しにくい場合があります。また、赤外線調査は浮きが疑われる範囲を推定する方法であるため、正確な浮き枚数や劣化状況を把握するには打診調査による確認が必要です。
そのため、手の届く範囲や必要な箇所で打診調査を行い、タイルの浮き率を算出したり、赤外線調査に適さない部分を補完したりする方法が有効です。

弊社では、ドローンによる赤外線調査に加え、ロープアクセスを使用した部分的な打診調査にも対応しています。建物全体へ足場を設置することなく、建物の形状や調査目的、予算に応じて、赤外線調査と打診調査を組み合わせた調査方法をご提案します。
ドローン点検の費用と調査期間
ドローン点検の費用は、建物の規模だけでなく、使用するカメラや調査範囲、報告書の内容によって変わります。見積りを依頼する際は、建物の図面や所在地、点検の目的を調査会社へ伝えると、より正確な費用と期間を確認できます。
ドローン点検の費用目安
建物や外壁を対象としたドローン点検は、1棟あたり30万~80万円程度が一つの目安です。ただし、これは一般的な目安であり、建物の規模や調査内容によって金額は大きく変わります。

可視光カメラによる目視点検のみであれば、比較的費用を抑えられます。一方、赤外線カメラによるサーモグラフィ調査や、劣化図・写真台帳・数量表などの作成まで依頼すると費用は高くなります。
小規模な建物でも、飛行計画の作成や各種手続き、安全管理員の配置、画像解析などが必要です。そのため、外壁面積に比例して単純に費用が安くなるとは限りません。
費用が変わる主な条件
ドローン点検の費用に影響する主な条件は、次のとおりです。
- 建物の外壁面積
- 調査する棟数や外壁面の数
- 建物と隣接地の間隔
- 電線や樹木などの障害物の有無
- 可視光撮影のみか、赤外線調査も行うか
- 打診調査や近接目視を併用するか
- 劣化図や数量表などの成果物を作成するか
- 飛行許可や道路使用などの手続きが必要か
- 現場までの距離や交通誘導員の配置が必要か
ドローンで撮影した画像は、現地調査後にパソコン上で整理・解析します。撮影箇所を図面と照合し、劣化の有無を確認して報告書へ反映するため、撮影枚数が多いほど解析作業にも時間がかかります。
建物の外壁面積が大きくなれば、必要な撮影枚数が増えるため、現地調査と画像解析の両方にかかる費用が高くなる傾向があります。
ただし、費用は外壁面積だけで決まるわけではありません。小規模な建物でも、隣接する建物や電線などの影響で外壁から十分な距離を確保できない場合、1枚の画像に写る範囲が狭くなります。その結果、同じ面積を調査する場合でも撮影枚数が増え、撮影位置の特定や画像の整理にも時間がかかります。
このように、ドローン点検の費用は、建物の面積に加えて、周辺環境や撮影条件、解析内容、必要な成果物を含めて算出されます。
調査から報告書提出までの期間
一般的な中小規模の建物であれば、現地でのドローン点検は1日程度で完了します。赤外線調査は、晴天時など、外壁表面に調査に適した温度変化が生じる気象条件で実施するため、天候が安定していれば予定どおり調査を進められます。
現地調査後は、撮影画像の整理、赤外線画像の解析、劣化箇所の図面への反映、報告書の作成を行います。一般的には、現地調査の完了から1週間~1か月程度で報告書を提出する流れとなります。
弊社では、ドローンによる外壁調査の完了後、通常5~10営業日程度で報告書を提出するケースが多くなっています。ただし、建物の規模や撮影枚数、劣化図・数量表などの成果物によって、提出までの期間は異なります。
赤外線調査では、現地の状況や撮影条件を把握した調査員が、赤外線画像の解析や報告書の作成に関わることが重要です。外壁の表面温度は、日射や日陰、反射、室外機などの影響でも変化するため、画像だけを見て機械的に浮きを判断することはできません。
そのため、現地を確認した調査員が可視画像と赤外線画像を照合し、温度異常が生じた原因を一か所ずつ検討したうえで、劣化箇所を図面や報告書へ反映します。この解析作業が必要となるため、現地での撮影が1日で完了しても、報告書の提出までには一定の期間が必要です。
ドローン点検が向いている建物と活用例
ドローン点検は、マンションやビル、学校、病院、工場など、高所の外壁を広範囲に確認する建物に適しています。足場を設置せずに短期間で調査できるため、建物を使用しながら点検したい場合にも活用できます。
12条点検に伴う外壁全面調査
建築基準法第12条に基づく定期報告では、一定の条件に該当する外壁について「全面的な打診等」が必要になります。
この「全面的な打診等」には、無人航空機に搭載した赤外線装置による調査も含まれています。制度の詳細は、国土交通省の「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」で確認できます。

足場を設置して全面打診を行う場合は仮設費用が大きくなるため、大規模修繕工事と同じ時期に実施されることが一般的です。一方、ドローンによる赤外線調査であれば、足場を設置する前に外壁の劣化状況を把握し、大規模修繕の必要性や実施時期を検討するための資料として活用できます。
弊社にも、竣工や前回の外壁改修から10年程度が経過した建物について、「すぐに足場を設置して大規模修繕を行うべきか判断するため、まずはドローンで外壁を調査したい」というご相談があります。
実際に、ドローンによる赤外線調査と部分的な打診調査を実施した結果、緊急対応を要する著しい劣化が確認されず、打診による浮き率も当初の想定より低かったことから、大規模修繕の実施時期を見直す判断材料となった事例もあります。
ただし、バルコニー内部や日射を受けにくい外壁など、赤外線調査に適さない部分は、打診調査や近接目視による補完が必要です。
外壁タイルの浮き・剥落が疑われる場合
外壁タイルの膨れやひび割れ、剥落などが見つかった場合は、ドローンを使用して高所を含む外壁全体を確認できます。赤外線調査を併用すれば、目視だけでは分かりにくい浮きが疑われる範囲も絞り込めます。
建物の一部でタイルの剥落が発生した場合、ほかの部分にも同様の劣化が生じている可能性があります。剥落した箇所だけを補修するのではなく、周辺やほかの外壁面も含めて調査することが重要です。
劣化の発生状況は建物によって異なります。日射や雨水の影響、外壁面の方位、施工状態などにより、特定の一面だけに浮きが集中するケースもあります。
一方、施工時のコンクリート面の目荒らしや清掃などの下地処理が十分でなかった場合は、タイルや下地モルタルの接着力が不足し、同じ施工条件の範囲に浮きが広がっている可能性があります。
ドローンによる目視・赤外線調査は、このような劣化の分布や発生傾向を建物全体から把握する際に有効です。
まとめ|建物に合わせてドローン点検と打診調査を使い分ける
ドローン点検は、足場を設置せずに高所や広範囲の外壁を確認できる調査方法です。可視光カメラではひび割れや欠損などの外観劣化を確認でき、赤外線カメラでは外壁タイルやモルタルの浮きが疑われる範囲を調べられます。
一方、バルコニー内部や障害物の多い場所など、ドローンでは撮影が難しい箇所もあります。また、赤外線調査だけでは浮きの状態を確定できないため、建物の形状や調査目的に応じて、打診調査や近接目視を組み合わせることが重要です。
弊社では、ドローンによる可視光・赤外線調査に加え、ロープアクセスによる部分的な打診調査にも対応しています。12条点検に伴う外壁全面調査、大規模修繕前の劣化状況調査、タイル剥落後の緊急調査など、建物の状況に合わせて調査方法をご提案します。
図面や建物の現況写真があれば、ドローン調査の可否や必要な調査範囲を確認できます。外壁の調査方法でお困りの場合は、お気軽にご相談ください。
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