マンション外壁調査の方法と費用|足場なしで行う調査の導入ケース

マンションの外壁調査は、大規模修繕工事のタイミングで仮設足場を設置し、外壁調査と補修工事を行うケースが多く見られます。
一方で、近年は足場費用や工事費の高騰により、まずはドローンによる赤外線調査やロープアクセスによる打診調査で、外壁の状態を確認するケースも増えています。
この記事では、マンション外壁調査の目的、足場なしで行う主な調査方法、実際の調査事例、費用の目安、見積依頼前に準備しておきたい資料について解説します。
マンション外壁調査とは
マンション外壁調査とは、外壁タイルや塗装面、コンクリート部分などの浮きやひび割れ等を確認するために行う調査です。
マンションの外壁では、タイル貼り仕上げが採用されていることが多く、年数の経過とともにタイルや下地モルタルが躯体から浮いたり、剥離したりすることがあります。

また、施工時の接着状況や下地処理、建物の揺れ、温度変化、雨水の浸入などによって、部分的に劣化が進行する場合もあります。
外壁タイルの浮きや剥離を放置すると、将来的にタイルが落下し、歩行者や居住者、車両などに被害を与えるおそれがあります。
そのため、マンションでは定期的に外壁の状態を確認し、剥落リスクのある箇所を把握したうえで、必要に応じて補修や改修を検討することが重要です。
一般的には、大規模修繕工事のタイミングに合わせて、12年~15年程度の周期で仮設足場を設置し、外壁調査と補修工事を行うケースが多く見られます。
一方で、近年は仮設足場や工事費の高騰により、まずは足場を設置せずに、ドローンによる赤外線調査やロープアクセスによる打診調査で外壁の状態を確認するケースも増えています。
足場なしの外壁調査は、仮設足場を組む前に劣化状況を把握したい場合や、剥落のおそれがある箇所を早急に確認したい場合、大規模修繕前の概算検討を行いたい場合などに活用されます。
足場なしで行うマンション外壁調査の主な方法
ドローンによる赤外線調査

ドローンによる赤外線調査は、外壁面積の大きいマンションでも効率よく調査しやすい方法です。
150戸を超える大型の分譲マンションなどでも、建物条件や調査範囲によっては1日~2日程度で調査を完了できるため、仮設足場を設置する必要があるかを判断するための一次調査や、10年に1度の外壁の全面調査に活用されます。
赤外線調査では、目視だけでは分かりにくいタイルや下地モルタルの浮きを、熱画像として記録できます。そのため、外壁の劣化状況を客観的に示しやすく、修繕の必要性を管理組合や理事会に説明する資料としても有効です。

外壁全体の劣化傾向を事前に把握しておくことで、大規模修繕前の段階で、重点的に確認すべき面や補修が必要になりそうな範囲を整理できます。
これにより、仮設足場の設置範囲や施工順序、概算費用の検討など、改修計画を立てるための判断材料として活用できます。
ロープアクセス打診調査

ロープアクセス打診調査とは、屋上などにロープの吊元を確保し、2本のロープを使用して作業員が外壁面を降下しながら打診調査を行う方法です。打診で外壁を直接叩き、音の違いによってタイルや下地モルタルの浮き、剥離の有無を確認します。
仮設足場を設置せずに高所の外壁を直接確認できるため、仮設コストを抑えやすく、緊急性の高い箇所にも比較的早く対応しやすい点が特徴です。
例えば、剥落のおそれがあるタイルを早急に確認したい場合やなどに有効です。
一方で、ロープアクセスは専門的な技術と安全管理が必要な調査方法です。大規模な建物や広範囲の全面打診では、ロープアクセスだけでなく、ゴンドラ、高所作業車、仮設足場などを含めて、建物条件や調査範囲に応じた方法を検討することが重要です。
足場なしでマンションの外壁調査の事例
①仮設足場を立てる必要があるかドローンで判断
大規模修繕では、足場仮設費が工事費全体の大きな割合を占めるため、「本当に今すぐ足場を立てて全面改修を行うべきか」を事前に判断することが重要です。
分譲マンションでは、竣工から10年前後を迎えると大規模修繕の検討時期に入りますが、外壁の劣化状況によっては、改修時期を数年後ろ倒しできる可能性があります。その判断材料として有効なのが、手の届く範囲の打診調査と、ドローンによる赤外線調査を組み合わせた外壁調査です。
実際に、地上10階建・約170戸のRC造分譲マンションにおいて、管理組合様および建築コンサルタント様から「足場を立てて大規模修繕を実施する時期を検討したい」というご相談をいただきました。建物はL字型で、東面の一部が日陰になりやすい環境であったため、赤外線調査の精度低下が想定される箇所については、手の届く範囲の打診調査を併用しながら確認を行いました。
調査の結果、タイルの浮きは非常に少なく、打診調査による浮き率は0.1%未満という極めて低い水準でした。一般的には、健全に施工された建物でも築10年程度で一定程度のタイル浮きが確認されることがありますが、本物件ではそれを大きく下回る結果となり、施工品質および躯体状態が良好であることが確認できました。
このように、ドローン赤外線調査と部分打診調査を組み合わせることで、足場を仮設する前の段階でも、外壁全体の劣化傾向を広範囲に把握できます。大規模修繕を今すぐ実施すべきか、数年後に計画してもよいかを判断するための基礎資料として活用できるため、管理組合様にとってもコストを抑えながら合理的な修繕計画を立てやすくなります。
本件では、ドローンによる赤外線調査を1日、打診調査を2日で完了し、現地調査後約14日で報告書を提出しました。足場を立てる前に現況を把握することで、建物の状態に応じた適切な修繕時期の検討が可能になります。
②剥落しそうなタイルがあるためロープアクセスで全面調査
外壁タイルに膨れや浮きが見られる場合、放置するとタイルの剥落につながるおそれがあります。特に道路側や人の通行がある場所では、建物の維持管理だけでなく、安全確保の観点からも早期に現況を把握することが重要です。
本件では、一部壁面にタイルの膨れが確認され、応急対応が実施されていました。しかし、他の壁面にも同様の剥落リスクがないか確認する必要があったため、足場を設置せず、コストを抑えながら外壁全体の一次調査を行いたいというご相談をいただきました。
当初はドローンによる外壁調査も検討されていましたが、隣接建物の影響により十分な撮影距離や日射条件を確保しにくく、赤外線調査では精度確保が難しいと判断しました。そのため、浮き・ひび割れ等の劣化数量を正確に把握することを目的として、ロープアクセスによる打診・目視調査を採用しました。
調査の結果、他の壁面においても膨れが確認されたため、剥落防止の観点から応急的にタイルを撤去しました。外壁全体のタイル浮き、ひび割れ等の劣化状況を整理し、劣化数量および位置を損傷図として取りまとめ、報告書として提出しました。
このように、ロープアクセスによる全面打診調査は、足場を設置する前の段階で剥落リスクや劣化数量を把握したい場合に有効です。特に、すでに一部で膨れや剥落の兆候が見られる建物では、改修工事の検討資料としてだけでなく、応急的な安全対策を行うための判断材料としても活用できます。
③12条点検をロープアクセスで実施
建築基準法第12条に基づく定期報告では、一定の条件に該当する建物について、10年に一度、外壁の全面調査が必要となります。本件では、12階建・約35戸の分譲マンションにおいて、外壁タイルの浮き状況を把握するため、ロープアクセスによる打診調査を実施しました。
発注者である建設会社様からは、浮きの検知率が高い打診調査で外壁全面を確認したいというご要望がありました。また、打診音による施設利用者への負担を抑えるため、利用者への影響が大きい東面については祝日に調査を実施してほしいという条件もありました。
現地下見の際、1階部分を約10㎡程度打診したところ、ほとんど浮きが確認されなかったため、当初は全体的に浮きの少ない建物と予想されました。屋上には丸環が設置されていない条件でしたが、パラペットへのクランプ設置が可能であったため、パラペットクランプを採用し、ロープの吊元を確保しました。
調査の結果、西面・南面・北面では浮きが少ない状況でしたが、東面のみ浮き箇所および数量が多く確認されました。東面については、今後の経年劣化により浮き同士がつながり、剥落のおそれがある1㎡以上程度の浮きへ進行する可能性がある状態でした。
、ロープアクセスによる打診調査は、足場を設置せずに外壁全面の浮き状況を把握したい場合に有効です。特に、12条点検において赤外線調査ではなく打診による確認が求められる場合や、壁面ごとの劣化傾向を正確に把握したい場合に適した調査方法です。
マンション外壁調査の費用が変わるポイント
外壁調査の費用は、一般的に外壁面積を基準に算出されます。
目安として、赤外線調査では外壁面積1㎡あたり150円〜350円程度、打診調査では1㎡あたり250円〜600円程度となることが多いです。
マンションの規模ごとの費用感は、以下のようなイメージです。
※建物形状、バルコニーの有無、調査範囲、報告書の内容などにより費用は変動します。
| 5階建30戸 調査面積1,800㎡ 費用目安40~70万 | 8階建50戸 調査面積3,500㎡ 費用目安70~140万 | 12階建150戸 調査面積7,000㎡ 費用目安150~240万 |
費用が変わる要因としては以下の理由があります。
①建物の規模と調査面積

外壁調査の費用は、基本的に調査する外壁面積が大きくなるほど高くなります。
そのため、5階建てよりも10階建て、30戸のマンションよりも100戸を超えるマンションの方が、総額としては高くなる傾向があります。
一方で、赤外線調査の場合は、建物規模が大きくなるほど1㎡あたりの単価は下がりやすくなります。これは、撮影準備、機材設置、報告書作成などの固定的な作業があるためです。小規模な建物でも一定の作業量は発生しますが、大規模な建物ではその作業を広い面積に分散できるため、㎡単価を抑えやすくなります。
反対に、打診調査は外壁を直接確認する作業のため、小規模でも大規模でも1㎡あたりの手間は大きく変わりません。調査面積が増えれば、その分だけ作業時間や人員も増えるため、赤外線調査ほど大規模化による単価低下は起こりにくい調査方法です。
また、調査面積が1,000㎡以下の小規模マンションでは、現地確認、工程調整、書類作成、案件管理、報告書作成などの固定費の割合が大きくなります。そのため、外壁面積が小さい場合でも、1㎡あたりの費用は割高になりやすい点に注意が必要です。
②調査の手法

外壁調査の費用は、どの方法で調査するかによって大きく変わります。一般的には、足場打診、ゴンドラ打診、ロープアクセス打診、赤外線調査の順に費用を抑えやすい傾向があります。
足場打診は、外壁全面に複数の作業員が近接できるため詳細な確認が可能ですが、足場の設置費用が大きくかかります。
ゴンドラ打診やロープアクセス打診は、足場を設置せずに高所部分を確認できるため、建物条件によっては費用を抑えられます。
赤外線調査は、外壁に直接触れず、離れた位置から広範囲を確認できるため、効率よく調査できる方法です。ただし、天候や日射条件の影響を受けやすく、浮きの検知精度は打診調査に比べて劣る場合があります。
このように、どの手法にも一長一短があるため、建物の条件や調査の目的に応じて、適切な方法を選定することが現実的です。
見積依頼前に準備しておきたい資料・情報
外壁調査の見積を依頼する際は、事前に建物の基本情報や図面を準備しておくと、よりスムーズに概算費用を確認できます。
特に、寸法入りの図面があると、外壁面積や調査範囲を把握しやすくなるため、見積精度が高くなります。図面がない場合でも、建物名称や所在地、階数、戸数、建物写真などがあれば、おおまかな費用感を確認できる場合があります。
見積依頼時に準備しておきたい主な情報は、以下のとおりです。
- 寸法入りの平面図・立面図
- 建物名称
- 所在地
- 大まかな調査予定時期
- 調査の目的
調査の目的については、「12条点検に伴う外壁全面調査」「大規模修繕前の劣化状況確認」など、分かる範囲で伝えておくと、適した調査方法を検討しやすくなります。
正確な見積には図面や調査範囲の確認が必要ですが、まずは分かる範囲の情報だけでも相談可能です。
まとめ:マンション外壁調査は目的に応じて方法を選ぶことが重要
マンションの外壁調査をご検討中の場合は、建物の図面や写真をもとに、調査目的に合った方法を選定することが重要です。
弊社では、ドローン赤外線調査、ロープアクセス打診調査、地上からの打診・目視調査を組み合わせ、マンションの立地条件や外壁の状態に応じた外壁調査を行っています。
大規模修繕前の劣化状況確認、足場仮設の必要性判断、12条点検に伴う外壁全面調査、剥落リスクのある箇所の確認など、目的に応じた調査方法をご提案できます。
図面や建物写真があれば、概算費用の確認も可能です。マンションの外壁調査をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。
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