赤外線外壁調査は何月からできる?建物の向きで変わる最適な時期

赤外線調査は何月からできる?

赤外線外壁調査は年間を通して実施可能ですが、建物の向きや時期を誤ると十分な精度が出ない場合があります。

実務では、必ずしも最適な時期に調査できるとは限らないため、「どの条件なら成立するのか」を踏まえた調査計画が重要です。

本記事では、建物の向きと季節ごとの日射条件を踏まえ、実務的に使える調査時期の目安と対応方法について解説します。

目次

【建物の向き別】赤外線外壁調査に適した時期の目安

赤外線外壁調査は年間を通して実施可能ですが、調査精度は季節や建物の向き、日射条件によって左右されます。
特に調査する物件の「どの面に、どの時間帯で日射が当たるか」によって外壁の劣化を検知する精度が変わるため、適切な時期を選定することが重要です。

ここでは、建物の向きと季節ごとの日射条件を踏まえ、赤外線外壁調査に適した時期の目安について解説します。
なお、調査時期の判断は建物条件によっても異なるため、具体的な計画については個別に検討することが重要です。

4月~5月

5月1日の日射状況と建物の向きによって赤外線調査の相性を〇×△で表した表

4月~5月は、冬に比べて太陽高度が徐々に高くなり、東面・西面にもバランスよく日射が当たりやすくなるため、全体的に安定した調査が行いやすい時期です。

また、朝方は冷え込みが残る日も多く、外壁が低温の状態から日射を受けることで温度差(較差)が生まれやすく、浮きの検知に適した条件が整いやすい季節といえます。

さらに、比較的天候が安定しており、天気予報の的中率も高いため、調査スケジュールを立てやすい点も特徴です。

実務的には、冬季(1月〜3月)の公共案件が一巡した後であり、年度初めのタイミングとも重なるため、調査依頼が比較的落ち着く傾向にあります。
そのため、スケジュールを確保しやすい“穴場シーズン”とも言えます。

6月~8月

7月1日の日射状況と建物の向きによって赤外線調査の相性を〇×△で表した表

6月〜7月にかけては太陽高度が年間で最も高くなり、北東面・北西面にも日射が当たりやすい時期となります。
そのため、建物の条件によっては、通常は日射が得られにくい北面の調査が可能になるシーズンです。

一方で、梅雨時期と重なるため降雨が多く、天候が不安定になりやすい点には注意が必要です。
また、天気予報の変動も大きく、調査可能日が限られる傾向があります。

さらに、正午前後は太陽高度が70°〜80°と非常に高くなり、日射が建物の真上に近い位置から当たるため、南面の温度差が出にくくなる場合があります。
そのため、「どの時間帯に撮影するか」といった調査計画が、精度を左右する要素となります。

9月~11月

10月1日の日射状況と建物の向きによって赤外線調査の相性を〇×△で表した表

9月〜11月にかけては、太陽高度が夏から秋にかけて徐々に低くなり、東面・西面にも効率よく日射が当たりやすくなるため、全体的にバランスよく調査ができるシーズンです。

また、気温も徐々に下がり始めることで、外壁の温度差(較差)が生じやすくなり、赤外線調査に適した条件が整いやすくなります。

天候も比較的安定しており、調査スケジュールを立てやすい時期です。
さらに、特殊建築物定期報告や年度末に向けた準備として、発注が増え始めるタイミングでもあります。

ただし、9月〜10月は台風の影響を受けやすく、調査日程が順延するリスクがあるため、余裕を持ったスケジュール管理が求められます。

12月~3月

1月1日の日射状況と建物の向きによって赤外線調査の相性を〇×△で表した表

冬季は正午の太陽高度が約35°前後と低くなるため、南東面・南面・南西面に日射が当たりやすく、赤外線外壁調査に適した時期です。
一方で、日の出が遅く日の入りが早いため、北東面・北西面は日射が当たりにくく、調査条件としては不利になるケースがあります。

「冬は気温が低いため赤外線調査ができない」という誤解がありますが、実際には、朝の冷え込みによる外壁の低温状態と、低い角度からの日射によって温度差(較差)が生まれやすく、浮きの検知に適した条件が整いやすい季節です。
さらに冬季は湿度が低く、水蒸気による赤外線の吸収が少ないため、赤外線の透過率が高いのも影響しているでしょう。

ただし、太陽高度が低いという特性上、隣接建物や周辺環境による「影」の影響を受けやすく、調査精度に影響が出る場合があります。また、朝方の霧が発生しやすい時期のため、現地での判断も必要です。

多くの法人が3月決算を控えていることから、予算消化のタイミングとして調査依頼が集中しやすい時期でもあります。

なぜ「建物の向き」で最適な時期が変わるのか

外壁が日射にあたると浮きを検知できる原理

赤外線調査は、外壁に日射が当たった際に生じる温度差(較差)を赤外線カメラで捉えることで、浮きなどの劣化を検知する手法です。

つまり基本的に冷えた壁面に強い日射が当たると浮きの検知率は向上します。メカニズムは以下の通り

赤外線調査で劣化が分かるメカニズム

外壁内部に浮きや剥離が生じている場合、空隙が断熱の役割を果たし健全部と比べて熱の伝わり方が遅いため、日射を受けた際の表面温度に差が現れます。この温度差を赤外線カメラで捉えることで、目視では確認できない劣化を検知することが可能となります。

赤外線調査は日射の角度で劣化の検知精度が変わる

赤外線調査の精度に関わる日射条件には、太陽の方位や高度(角度)、大気を通る距離、大気中の水蒸気量などがあります。

外壁だけで考えるとイメージしにくいため、まずは「真夏の正午に地面が熱くなる理由」で考えてみましょう。

真夏の正午に地面が強く温まるのは、太陽高度が高く、日射が地面に対して垂直に近い角度で当たるためです。このとき日射エネルギーは分散せず、効率よく地面に伝わります。

一方で、日の出や夕方は太陽高度が低く、日射が斜めから当たるためエネルギーが広い範囲に分散し、温まりにくくなります。さらに、大気を通過する距離が長くなることでエネルギーが減衰することも、補助的な要因として影響します。

この原理は外壁にも同様に当てはまり、日射の当たり方によって外壁の温まり方や温度差(較差)の出方が変わります。その結果、同じ建物であっても時間帯や季節によって調査条件が異なります。

赤外線調査員は太陽高度や太陽方位から日射条件を予測して調査計画を立案します。

日射が当たらない北面等をどのように調査するか

赤外線外壁調査は日射によって生じる温度差(較差)を利用するため、日射が当たりにくい北面や周囲の建物で常に日陰となる壁面では、十分な温度差が得られない場合があります。

そのため、こうした壁面については「撮影タイミングの工夫」や「他の調査手法との併用」によって対応することが重要です。
調査条件に応じて適切な手法を選定することで、精度を確保することが可能となります。

気温上昇のタイミングで撮影する

日射が直接当たらない壁面であっても、外気温の上昇に伴って外壁全体が徐々に温められることで、内部の劣化部と健全部の温度差が生じる場合があります。

特に、10時~12時にかけて気温が上昇するタイミングでは、外壁の温度変化に差が生じやすく、北面であっても赤外線による判別が可能となるケースがあります。以下は日射があたってない陰面の画像です。

ただし、この方法は日射を直接利用する場合と比べて温度差が小さくなる傾向があるため、撮影時間の見極めや現地での判断が重要となります。

打診調査を行う

日射条件が十分に確保できない壁面については、赤外線調査だけに頼らず、打診調査を併用することが有効です。

打診調査は、外壁を直接叩いて音の違いから浮きや剥離を確認する手法であり、日射条件に左右されずに劣化の有無を判断することができます。

廊下から打診棒で調査する調査員

北面が共用廊下のマンションは多いですが、もし妻面の場合はロープアクセス等で調査できます。

北面や隣接建物の影となる部分など、赤外線では判別が難しい箇所については、打診調査を併用することで調査精度を補完することが可能です。

建物の条件に合わせた「赤外線調査計画」が必要

「大規模修繕のスケジュール上、早急に調査が必要」「決算前に発注を済ませたい」といった理由から、必ずしも建物にとって最適な時期に調査ができるとは限りません。実務においては、むしろ条件が揃わないケースの方が一般的です。

その時期・その壁面において最も温度差(較差)が生じやすいベストタイミングを狙う計画が必要です。

建物の条件は一棟ごとに異なるため、最適な調査計画も一様ではありません。
現在の状況やご希望のスケジュールに応じて、実現可能な範囲での最適な調査方法をご提案いたします。

「この時期でも調査できるのか」「どの手法が適しているのか」など、具体的な検討については下記よりお気軽にご相談ください。

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