小中学校14校・26棟のローン赤外線調査の事例

設計事務所からの依頼を受け、九州地方の学校14校・26棟を対象とした外壁調査を実施しました。
本案件では、ドローンによる赤外線調査を中心に、地上からの打診・目視調査、上裏の赤外線撮影を組み合わせています。
冬季の限られた日射条件のなか、各建物・各壁面の撮影可能時間を事前に整理し、現地調査から報告書作成まで約2か月で完了しました。
調査概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 建物用途 | 学校施設 |
| 対象規模 | 14校・26棟 |
| 構造 | RC造 |
| 調査方法 | ドローン赤外線調査、上裏赤外線調査、打診・目視調査 |
| 依頼者 | 設計事務所 |
| 現地調査 | 10日間 |
| 全体期間 | 現地調査から報告書作成まで約2か月 |
| 成果物 | 調査報告書、損傷図、劣化数量表、改修優先順位表 |
ご相談内容
学校施設の改修計画を策定するため、外壁の劣化状況を調査できる業者を探しているとのご相談をいただきました。
主なご要望は次のとおりです。
- ドローン赤外線調査が可能な壁面を建物ごとに判断してほしい
- 3案件・計14校の調査を、3か月の履行期間内に完了してほしい
- 劣化が著しい建物を抽出し、改修工事の優先順位を整理してほしい
- 赤外線調査の判定結果を、部分的な打診調査によって確認してほしい
- 赤外線調査の考え方や注意点を施設担当者へ説明してほしい
- ひび割れを0.5mm未満と0.5mm以上に分類して集計してほしい
対象となる学校は建物の配置、壁面方位、周辺樹木、隣接建物の状況がそれぞれ異なるため、すべての壁面を同じ方法で調査することは困難でした。
そのため、建物ごとではなく、壁面ごとに調査可否を判断しました。
本案件における課題
冬季で日射時間が限られていた
赤外線外壁調査では、日射などによって発生する外壁表面の温度差を利用して、仕上げ材の浮きが疑われる箇所を抽出します。
本案件は冬季の調査だったため、晴天日が少なく、壁面に十分な日射が当たる時間も限られると予想されました。
26棟を短期間で調査するためには、現地で日射を待つのではなく、各学校・各壁面の撮影可能時間を外壁の角度から割り出して事前に整理する必要がありました。
建物や壁面ごとに撮影条件が異なった
同じ学校内でも、東西南北の方位、校舎の配置、隣接建物や樹木の影響によって日射条件が異なります。
特に樹木によって壁面に影が生じる箇所については、赤外線調査だけで安定した判定を行うことが難しいため、打診・目視調査などの別手法による補完が必要でした。
上裏部分に剥落リスクがあった
学校施設の上裏部分は、外壁面とは形状や日射条件が異なります。また、かぶり厚や劣化状況によっては、爆裂によるコンクリートの剥落が発生する可能性があります。
そこで通常の外壁撮影とは別に、上裏部分を対象とした赤外線撮影を計画しました。
調査計画と技術的判断
壁面ごとの日射条件から撮影スケジュールを作成
全校の配置、壁面方位、周辺建物、樹木の状況を確認し、それぞれの壁面に日射が当たる時間帯を整理しました。
その結果をもとに、午前中は東面、午後は南面・西面を中心に撮影するなど、学校ごとの調査順序を決定しています。
履行期限も短いため距離の近い学校については、1日に2校を調査する計画とし、移動時間と日射待ち時間を削減しました。
単純に学校単位で調査日を割り振るのではなく、壁面の撮影適期を基準にスケジュールを組むことで、調査精度を確保しながら現地日数を圧縮しています。
ドローン赤外線調査が難しい範囲を事前に抽出
樹木、隣接建物、日陰などの影響を受ける壁面については、事前に赤外線調査の適用可否を判断しました。赤外線画像による判定が難しいと判断した範囲は、地上からの打診・目視調査などで補完しました。
これにより、撮影後になって「画像を取得したものの判定できない」という状況を可能な限り防いでいます。
上裏部分を外壁面とは別の方法で撮影

上裏部分については、東西南北の外壁面とは別に撮影を実施しました。
通常の外壁撮影と同じ条件では温度差を把握しにくいため、撮影角度、距離、時間帯を調整し、爆裂が疑われる温度異常の把握を行っています。
打診調査によって赤外線結果を確認
赤外線画像から浮きの疑いがある箇所を抽出し、そのうち地上・内部から確認できる箇所について打診調査を実施しました。
赤外線調査と打診調査の結果を照合することで、赤外線画像上に現れた温度差が、実際の浮きによるものか、補修跡や材料差によるものかを確認しました。
実施した調査内容
本案件では、主に次の業務を行いました。
- ドローンによる外壁の赤外線撮影
- ドローンによる可視画像の撮影
- 上裏部分の赤外線撮影
- 地上からの打診・目視調査
- 赤外線画像の解析
- 赤外線判定結果と打診結果の照合
- ひび割れ幅の分類と数量集計
- 建物別・壁面別の劣化数量集計
- 損傷図の作成
- 改修優先順位表の作成
- 調査報告書の作成
- 施設担当者への赤外線調査に関する技術説明
赤外線調査と打診調査の照合結果
赤外線画像から浮きの疑いがある22か所を抽出し、地上から打診できる範囲について確認しました。
その結果、22か所のうち81.8%で、赤外線画像による判定と打診調査の結果が整合しました。
残りの18.2%について確認したところ、過去に補修された箇所の材料差などによって温度差が生じており、浮き以外の要因が赤外線画像に現れていることを確認しました。
この結果を以後の解析にも反映し、補修跡、日陰、汚れ、材料差などによる温度変化と、浮きが疑われる温度変化を区別しながら判定を行いました。
※81.8%という数値は、本案件で打診確認を行った22か所における照合結果です。赤外線調査全般の検出精度を示すものではありません。
調査結果
天候にも恵まれ、事前に作成した撮影計画に沿って調査を進めることができました。撮影条件が不足したことによる大規模な撮り直しは発生せず、26棟の現地調査を10日間で完了しています。
調査によって、外壁に2㎡以上連続して浮いている疑いのある範囲を確認し、打診結果や劣化状況とあわせて、優先的な対応を検討すべき箇所として整理しました。
また、当初は緊急対応が必要な建物として想定されていなかった施設からも、剥落リスクを考慮すべき劣化を抽出しました。調査結果を建物別・壁面別に整理し、劣化数量と位置を損傷図に反映。
報告書と改修優先順位の整理
報告書には、主に次の内容をまとめました。
- 建物別・壁面別の劣化状況
- 浮きが疑われる箇所の位置と範囲
- ひび割れの位置、幅、数量
- 爆裂、欠損等の劣化状況
- 赤外線画像と可視画像
- 打診調査との照合結果
- 劣化数量表
- 損傷図
- 改修工事の優先順位
単に劣化箇所を列挙するのではなく、劣化の範囲、剥落時の影響、建物利用者の動線などを踏まえて、改修の優先順位を整理しました。
報告書は当初の履行期限より20日前に提出し、現地調査から報告書作成まで約2か月で業務を完了しています。
学校施設の外壁調査で重要なこと
学校施設では、児童・生徒や職員が建物周辺を日常的に利用します。自治体の学校施設は上裏の爆裂による剥落が非常に起こりやすいため、自治体の職員と話したことがる。行ってた
そのため、外壁の劣化状況を把握するだけでなく、上裏に剥落リスクがないかを確認することが重要です。仕様書では上裏調査について記載がなく、外壁面積にも含まれていませんが、非常に重要です。
また、複数の学校・校舎を短期間で調査する場合には、次のような対応が必要になります。
- 建物ごとではなく壁面ごとに赤外線調査の可否を判断する
- 方位と日射条件を踏まえて撮影順序を決める
- 赤外線調査が難しい範囲を打診・目視調査で補完する
- 上裏や庇など、外壁面とは異なる条件の部位を別途確認する
株式会社ドローンメイトでは、建物の配置や周辺条件を確認したうえで、ドローン赤外線調査、地上赤外線調査、打診・目視調査を組み合わせています。
複数校・複数棟の調査計画、赤外線撮影、解析、損傷図、報告書作成まで対応可能です。
学校施設の外壁調査方法や概算費用については、図面や現地写真をもとにご提案します。複数施設をまとめた調査についてもご相談ください。


