ロープアクセスでマンションの打診調査の事例

地上11階建て・約100戸の賃貸マンションにおいて、ロープアクセスによる外壁タイルの打診・目視調査を実施しました。
一部の壁面で外壁タイルの膨れが確認され、すでに応急対応が行われていました。しかし、ほかの壁面にも同様の劣化や剥落リスクがないか確認する必要があったため、足場を設置せずに外壁全体の一次調査を実施したいとのご相談をいただきました。
当初はドローンによる外壁調査も検討しましたが、南面が隣接建物の影になるため、赤外線調査では必要な精度を確保することが難しいと判断しました。
そこで、タイルの浮き・ひび割れ等の位置と数量を直接確認できる、ロープアクセスによる打診・目視調査を採用しました。
ご相談内容
発注者から、次のようなご要望がありました。
- 一部壁面で確認されたタイルの膨れに対してほかの壁面にもタイルの浮きや剥落リスクがないか確認したい
- 足場を設置せず、費用を抑えて一次調査を実施したい
- 改修工事の検討に必要な浮き・ひび割れ等の位置と数量を把握したい
- タイルが3種類あるため、種類ごとに浮き数量を集計したい
- 調査した劣化箇所をマーキングしてほしい
建物概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 建物用途 | 賃貸マンション |
| 建物規模 | 地上11階建て・約100戸 |
| 構造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造 |
| 外壁仕上げ | タイル仕上げ |
| 調査目的 | 改修工事に向けた劣化位置・数量・浮き率の把握 |
建物の南面は隣接建物の影響で日陰になる時間が長く、赤外線調査に必要な外壁表面の温度差を確保しにくい環境でした。
赤外線調査ではなくロープ打診を採用
当初は、ドローンによる赤外線調査で外壁全体の劣化傾向を確認する方法が検討されていました。
しかし、赤外線調査は、日射などによって外壁に生じる温度差から、タイルや下地モルタルの浮きの可能性がある範囲を判定する方法です。
今回の建物では、隣接建物の影響で南面に十分な日射が当たらず、赤外線調査では浮きの判定精度が低下する可能性がありました。
また、今回の目的は、改修工事の検討に使用する浮き・ひび割れ等の位置と数量を把握することでした。一部壁面ではすでにタイルの膨れが確認されており、剥落リスクのある箇所を直接確認する必要もありました。
以上の条件から、外壁を直接叩いて浮き音を確認できるロープアクセス打診調査が適していると判断しました。
丸環がない屋上での吊元計画
屋上には、ロープの吊元として使用できる丸環が設置されていませんでした。
現地下見の結果、パラペットにクランプを設置できることを確認したため、クランプを使用してロープの吊元を確保しました。
調査漏れを防ぐため、ロープアクセスの降下間隔を約2mピッチに設定し、隣接する調査範囲を一部重複させながら打診・目視調査を行いました。
建物形状やバルコニーの配置を確認し、外壁全体を調査できるように降下位置を計画しています。
車両動線を考慮した安全対策
建物の1階道路側には車両の出入りがあり、調査員の直下を常時立入禁止にすることが難しい環境でした。
そのため、地上に警備員を配置し、ロープで作業する調査員の位置と車両の通行状況を確認しながら調査を実施しました。
必要に応じて車両の進入を一時的に制限し、建物利用者や通行車両の安全を確保したうえで作業を進めました。
実施した調査
今回の調査では、次の作業を実施しました。
- ロープアクセスによる外壁タイルの打診調査
- ロープアクセスによるひび割れ・欠損等の目視調査
- 階段内部から手の届く範囲の打診調査
- 浮き・ひび割れ等の位置へのチョークによるマーキング
- 剥落リスクが高いタイルの応急撤去
- タイルの種類ごとの浮き数量集計
- 劣化位置を記録した損傷図の作成
- 浮き率および劣化数量の算出
- 調査報告書の作成
調査日数
| 作業内容 | 所要期間 |
|---|---|
| 現地調査 | 4.5日 |
| 現地調査完了から報告書提出まで | 約9日 |
現地調査後は、マーキング位置、現場写真および調査記録をもとに、損傷図と劣化数量表を作成しました。
調査結果
当初タイルの膨れが確認されていた壁面以外でも、同様の膨れが確認されました。
剥落のおそれがある箇所については、第三者被害を防止するため、現地で応急的にタイルを撤去しました。
また、ロープアクセスによる打診・目視調査によって、次の情報を整理しました。
- 外壁タイルの浮き位置
- タイルの種類ごとの浮き数量
- 壁面ごとの浮き率
- ひび割れ等の劣化位置
- 改修工事で確認・補修が必要となる範囲
調査結果は損傷図および劣化数量表として取りまとめ、改修工事の検討に使用できる報告書として提出しました。
調査では、外壁の下地処理状態の影響により、タイルの膨れや浮きが発生しやすいと考えられる状態も確認されました。
今回の調査のポイント
今回の事例では、当初検討されていたドローン赤外線調査に限定せず、建物条件と調査目的に応じてロープ打診へ変更しました。
- 隣接建物による日陰の影響を考慮
- 赤外線調査では精度確保が難しいと判断
- ロープアクセスによる打診・目視調査を採用
- 丸環がない屋上でパラペットクランプを使用
- 約2mピッチで降下し、調査範囲を一部重複
- 車両動線に対応するため警備員を配置
- 剥落リスクの高いタイルを応急撤去
- タイルの種類ごとに浮き数量を集計
- 損傷図、劣化数量、浮き率を整理して報告
- 調査結果に応じてバルコニー内部を追加調査
赤外線調査が適さない建物でも、ロープアクセスや地上・共用部からの打診調査を組み合わせることで、足場を設置する前に外壁の劣化状況を把握できる場合があります。
ロープアクセスによる外壁調査をご検討の方へ
株式会社ドローンメイトでは、ドローン赤外線調査、ロープアクセス打診調査、地上からの打診・目視調査を組み合わせ、建物条件と調査目的に応じた方法をご提案しています。
「タイルの膨れが見つかったため、ほかの壁面も確認したい」「足場を設置する前に浮き数量を把握したい」「赤外線調査が適している建物か判断してほしい」といったご相談にも対応しています。
建物の立面図、平面図、外観写真などをご共有いただければ、調査方法と概算費用をご提案いたします。


