赤外線調査のデメリット・メリットを解説!外壁の診断事例を紹介

外壁調査には、大きく分けて「打診調査」と「赤外線外壁調査(ドローンを含む)」があります。

赤外線調査は、外壁内部の”目に見えない劣化”を可視化する調査手法であり、仮設工事が不要なため低コストに外壁の全面点検ができる優れた調査法です。

この記事では、集合住宅や福祉施設などで赤外線調査を行っている外壁調査事業を展開している『ドローンメイト』が解説します。

赤外線調査のデメリットなども記載していますので、調査方法をご検討中の方は参考にしてみてください。

目次

赤外線調査とは

外壁の赤外線調査を行うドローン

赤外線調査とは、足場を組まずに非接触・非破壊で外壁の劣化状況を調査する手法です。

外壁の劣化は肉眼で確認することが難しく、一般的に足場やゴンドラを設置して打診棒で叩いて調査を行います。

対して、赤外線法は足場を組まずに浮きを調査できるため、大規模修繕の前の予算把握、タイル剥落時の緊急調査、10年に一度の全面調査などに利用されています。

赤外線カメラで建物の外壁の温度データを取得し、それを解析することによって目視では確認できない浮きや水分滞留等の劣化症状を把握できます。

赤外線法には、ドローン撮影法と地上撮影法の2つがありますが、どちらも特定建築物の定期報告での使用に国交省から認められている調査方法です。

赤外線の定期報告(12条点検)における利用ついてはこちら

近年のサーモグラフィ―の性能の向上、ドローンで近距離から撮影、赤外線法のガイドラインの確立等の技術の発展で調査品質が向上しており、民間・自治体ともに少しずつ普及が進んでいる調査法です。

赤外線調査で発見できる外壁の劣化現象

赤外線調査の主な調査対象となる劣化現象は”浮き”と”水分滞留”です。

浮き

浮きとは、外壁の内部に空隙ができる現象です。温度・湿度の上昇による素材同士の歪みによって発生したり、施工不良が原因で発生することもあります。

浮きは時間が経過すると範囲が少しずつ広がっていき、やがて重みに耐えられずに剥落します。

1㎡程度のまとまった浮きになると剥落する可能性が高くなるため、緊急の対処が必要です。

水分滞留

水分滞留は、シーリングのひび割れ箇所、外壁のクラック、笠木周りから水分が侵入する現象です。

放置するとコンクリートが中性化して鉄筋が錆て爆裂という劣化現象を引き起こします。

赤外線調査でタイルの浮き・水分滞留を検出する原理

赤外線の説明図解

赤外線法とは、人間の目では見えない遠赤外線から赤外線カメラ(サーモグラフィ―)から温度情報を取得してそれを解析する調査法です。

この項目では、赤外線法で”浮き”や”水分滞留”を検出するメカニズムについて解説します。

浮きの検出メカニズム

浮き部は、日射が当たると健全部に比べて高温になります。その仕組みは以下のとおりです。

赤外線による外壁調査の浮き検出のメカニズム

太陽の日射が外壁に当たると、表面のタイルの温度は高くなり、時間とともにタイルの熱は、モルタルやコンクリートに移動します。

しかし、浮き部分は隙間(空気)があるため、熱の移動が遅くなり健全部と比較して高温になります。

コンクリートやモルタルの熱伝導率は1.5W/mkですが、空気は0.024W/mk。空気はモルタル等と比較して熱伝導率が62.5分の1です。

このように空気は熱伝導率が非常に低いため、浮き部分の熱は逃げ場を失い高温になります。

赤外線カメラはこのタイルから放射される熱をデータとして保存して、色をつけることで浮き部分を検出できるという仕組みです。

しかし、高温になるのは浮き部分だけではありません。建物の汚れや暖房設備や熱源となる設備、コンクリートの水平打継目、笠木・庇付近の熱伝導、反射などたくさんあります。

赤外線画像の解析作業では、そういったノイズの可能性を考えながらタイルが剥離して空気が溜まっていると思われる高温部を特定します。

水分滞留の検出メカニズム

水分滞留のある箇所は、日射が当たると健全部に比べて低温になります。その仕組みは以下のとおりです。

赤外線による外壁調査の水分滞留の検出のメカニズム

外壁に太陽の日射があたると、壁面の温度は上昇します。

しかし、水分が滞留している箇所は、日射が当たっても健全部に比べて温度が上昇しにくいです。

これは水の熱容量が大きいためです。(ヤカンに水を入れて火にかけても沸騰するのに時間がかかるのをイメージしていただくと分かりやすい)

また、熱伝導は温度が高い方から低い方に移動するため、日射で温められたタイルの熱が温度の低い水分に移動します。

しかし、水分は熱容量が大きいため、なかなか温度が上昇しません。

これが水分滞留がしている箇所が健常部と比べて温度が低くなるメカニズムです。

打診調査と赤外線調査の比較

外壁調査の主流な手法は「打診調査」と「赤外線調査」の2種類あります。

調査法精度コスト調査期間
特長
ドローン×赤外線
ドローン×赤外線
〇◎◎赤外線に加えてクラックの調査も同時にできる
高さに制限がないため高層建築物ほどコストパフォーマンスがよい

調査員によって精度に差がでやすい
地上赤外線法
赤外線カメラで外壁調査
〇◎◎1人で調査できるため低価格
地上から撮影するため高い建物は調査が難しい
クラック等の目視調査は別途必要
足場×打診
足場を設置して打診
◎××短い打診棒で耳を近づけられるため精度が高い
補修にもっとも適している
打診の効率が最も良い
ゴンドラ×打診
ゴンドラで打診
◎ゴンドラの設置費用が必要なため高額
風が強い日は作業ができない
足場よりも低コストで打診と目視ができる
ロープ×打診
ロープアクセスで打診
〇〇〇ドローンや赤外線法と組み合わせて調査できる
ピンポイントで補修も可能
調査精度や補修の品質は足場に劣る

建物の立地条件、規模、周りの環境によって調査費用や精度はことなりますので大まかな目安として参考にしてみてください。

外壁調査の手法の比較の詳細情報はこちら

ドローン赤外線調査と地上赤外線調査の違い

ドローンが赤外線調査をしている画像

赤外線法には、地上から赤外線カメラ(サーモグラフィ―)で撮影する地上赤外線法と、赤外線カメラを搭載したドローンで撮影するドローン赤外線外壁調査があります。

両手法の違いは以下の通りです。

地上赤外線法ドローン赤外線法
目視調査(クラック等)不可
高所の撮影困難
密集した建物の撮影困難
夜間の撮影困難
許可の取得不要必要
調査に必要な人数1名で可2名以上

赤外線法はもともと地上から撮影する方法でした。しかし、近年のドローン技術の発展により今後ドローンによる空中からの撮影が主流になっていくと予想できます。

ドローンによる調査は、赤外線カメラだけでなく可視光カメラも搭載しているため、積算に重要なクラックの数量も拾えます。

さらに、高度に制限がないため100mを越える高層建築物でも、角度を付けずに10m前後の距離から撮影できます。

ドローンによる外壁調査は、地上赤外線法の「目視調査ができない」「高い建物の調査は精度が落ちる」等のデメリットを克服した調査法です。

ただし、ドローン外壁調査は飛行許可が必要であり、夜間撮影が困難です。(夜の飛行は人件費も増え、危険も伴う)

手軽さでは地上撮影法に軍配が上がるため、弊社では、空と地上からの両方を併用して調査を行っています。

赤外線調査のデメリット

外壁調査の手法は、打診法や赤外線法がありますが現時点では完璧な手法は存在しておらずどの手法にも一長一短あります。

赤外線調査のデメリットは以下の通りです。

  • 天候に左右される
  • すべての浮きを検出できるわけではない
  • 調査が難しい建物や仕上げ材がある

天候に左右される

赤外線法は、外壁に日射が当たった際の温度上昇を利用して浮きや水分滞留を検出するため、日射がない条件で撮影を行うと劣化の検出精度が落ちます。

曇りの日に壁面温度の上昇が大きい時間帯を狙って撮影する手法もありますが、それでもしっかり日射が当たっている気象条件での撮影と比較すると検出率は下がります。

そのため赤外線で調査を行う際は、晴天の日を狙って調査を行います。調査当日に曇りになった際には日を改めて調査を実施します。

そのため、「4月3日に調査を実施」と日付を確定できず、「4月1日~4月7日の間の天候に恵まれた日」といったザックリとした決め方になります。

もし、踏査当日に気象が曇りや雨になった場合は、赤外線撮影は中止になり可視光・打診調査・目視調査等を行います。

出来る限り良い条件で撮影計画をしますが、天候の影響で予定が狂ってしまうこともあります。

また、拠点から遠く離れた地域の調査の場合、天候が恵まれないときは、晴れるまで調査員が滞在となりますのでその分費用が割り増しになりがちです。

調査が難しい建物や仕上げ材がある

赤外線外壁調査は多くの利点を持つ一方で、調査が困難もしくは不可の仕上げ材があります。例えば以下のようなラスタータイルは調査には不向きです。

赤外線調査では反射率が高いため調査難易度が高いラスタータイル
赤外線調査が困難な光沢のあるラスタータイル

赤外線カメラは、外壁が放射する熱を測定することで浮きや水分滞留を検出します。

ピカピカと光った反射率が高い(放射率が0.7以下)のタイルは、鏡で物が反射するように写りこんだ物の温度の影響を受けてしまうため、外壁の温度を正常に測ることができません。

以下は、赤外線調査に適した構造・仕上げ材の一覧表です。

調査可能・RCタイル貼り
・ALC・PC板タイル貼り
・ALC(水分滞留)
・モルタル
・打ちっぱなし
調査困難・光沢のあるラスタータイルや鏡面タイル
・凹凸があるタイル
・材料が異なる組み合わせのタイル
調査不可・レンガなどの組積造
・団子張りタイル
・乾式モルタル張り

調査困難な仕上げ材は、二時刻間解析といった手法で調査自体は可能ですが、難易度が高くなります。

ラスタータイルに関しては、洗浄により光沢が失われている場合、通常通り調査できる可能性があります。

2色以上の組み合わせの外壁は、調査が難しいケースと問題なく調査できる場合があります。

すべての浮きを検出できるわけではない

赤外線調査は、剥落の恐れがある面積の大きな浮きは問題なく検出できます。

しかし、温度上昇を伴わない浮き(浮き厚0.1mm以下、そもそも浮きではなく接着力が弱いタイルという見解もある)は検出が困難です。

各種測定法によるタイル仕上げ外壁の診断精度に関する研究」では、打診法と赤外線法の外壁劣化箇所の検出率を比較したデータを見ることができます。

各調査の特徴を簡単にまとめると以下のとおりです。

【打診調査】

  • 調査員人によって検出精度が異なり、10%~60%の検出率の違いがある
  • 5㎝角の浮きはほぼ検出できない

【赤外線法】

  • 厚さ0.1mmの浮きをほぼ検知できない
  • 浮きの厚さ10㎝、位置が30mm以上のばあい打診より検出率が高い

打診調査で検出できるが赤外線調査では検出できない浮きもあれば、逆に赤外線で検出できるが打診で検出できない浮きもあるという結果となっています。

どの調査法でも100%の精度で浮きを検出するのは不可能です。

ドローンメイトでは、検出精度を向上させるために赤外線に加えて、手の届く範囲の打診調査を行っています。

赤外線調査のメリット

赤外線調査には以下のメリットがあります。

  • 調査コストの削減
  • 劣化がない場合調査費のみ
  • 劣化箇所の数量把握
  • 工期が短い
  • データが保存できる
  • 安全性が高い
  • 住居者への負担が小さい

調査コストの削減

赤外線法の調査にかかる総費用は、打診調査(本足場、ゴンドラ、高所作業車、ブランコ等平均)の約3分の1、本足場については10分の1程度です。

160社に外壁調査の見積もりアンケートを依頼した「外壁診断費用に関する調査」では、打診法と赤外線法の1㎡あたりの単価が以下のような結果となっています。

 打診(19社の平均)赤外線(28社の平均)
直接費 (人件費等)412円/㎡288円/㎡
仮設費
(本足場、ゴンドラ、 高所作業車、
ブランコ等の中央値)
573円/㎡31円/㎡
諸経費315円/㎡125円/㎡
総費用1299円/㎡444円/㎡
RC11造 45二丁掛けタイル仕上げ 延べ床面積5,887㎡の場合の見積もり平均

打診調査は、仮設費で多くのコストがかかっているのが分かりますね。仮設費用は本足場>ゴンドラ>高所作業車>ブランコの順に大きいです。

対して、赤外線法は仮設費がほぼ不要。31円/㎡はおそらく高所作業車を使う業者があったからと思われます。

赤外線調査は、地上赤外線法であれば1人、ドローンによる赤外線法であれば2人(条件によって3人~5人)と少人数で調査が可能です。

しかも、現地調査が1日~3日で終わり、調査面積が広いほどコストパフォーマンスが高くなります。

ドローン外壁調査の費用についてはこちらで解説しています。

劣化がない場合調査費のみ

赤外線調査は、仮設工事が不要なため調査と工事を分離できます。

これにより劣化が少ない場合は経過観察、外壁に剥落リスクのある浮きがある場合は補修というように、柔軟な選択ができるようになります。

マンションの維持保全では、12~13年周期で調査も補修工事も一緒にやろうといった「定周期保全」という考え方が一般的です。

劣化しても定期的に修繕されるため、建物の維持としては理想ですが、修繕が過剰になりやすいというデメリットもあります。

赤外線で外壁を調査すれば、剥落リスクが高い浮きがあるのか、さらにドローンであれば補修が必要なクラックがあるかを調査できますので、「外壁の工事の緊急性」の判断ができます。

劣化箇所の数量把握

浮きやクラックは、大規模修繕の途中で工事費が変動しやすい劣化現象です。実際に補修業者の多くが「タイル補修」「躯体のひび割れ補修」などが最終的に変動しやすいと回答しています。

実数清算と詳細見積で差が出やすい補修項目

実際に「マンションの大規模修繕工事における工事中の変動要素の取り扱いに関する調査結果」では修繕業者48社中21社(43.8%)が「工事契約金額から追加清算になることが多い」と答えてます。

赤外線は足場を組む前におおまかな浮きの面積やタイル枚数を把握できるため、改修工事の予算把握がより正確になります。

ドローンメイトでは、以下の画像のように赤外線画像の浮き箇所の面積を算出し、集計します。

浮きの赤外線画像と可視光画像

足場を立てる前に、事前に浮きやクラックの数量が把握できていれば、足場を立てて後に「想定したよりも浮きが多く積立金が不足している」といった事態を避けられます。

工期が短い

赤外線調査はカメラで撮影した画像を解析して劣化を検出する手法です。広範囲を効率よく撮影できるため、現場での作業が1日~3日程度で完了します。

例えば、外壁面積が5,000㎡を超える14階建ての高層マンションなどでも1日~2日で撮影が完了。その後、パソコンで1週間~1ヶ月かけて赤外線画像を解析して報告書を作成します。

また、赤外線調査は仮設工事が不要なため、依頼からすぐに着手できるのも大きなメリットです。

マンションのタイルが剥落して他に落ちそうなタイルがないか等、緊急で調査が必要なときにも速やかに調査をすることが可能です。

データが保存できる

赤外線画像は、温度分布を視覚的に示すため、異常箇所が一目でわかります。

温度異常が視覚化されることで、非専門家でも分かりやすく問題を理解でき、関係者間でのコミュニケーションがスムーズになります。

特にクライアントへの報告や説明が容易になる点は大きな利点です。

また、赤外線画像データを長期的に保存することで、建物や設備のメンテナンス履歴としても活用できます。

過去のデータと比較することで、劣化のパターンや頻度を把握し、将来的なメンテナンス計画をより効果的に策定することができます。

赤外線画像は、調査結果の証拠としての役割を果たします。

例えば、保険請求や法的な紛争において、客観的な証拠として提出することが可能です。赤外線画像は視覚的に明確なため、証拠資料として使用できます。

住居者への負担が小さい

赤外線調査は足場を組まず、音が小さく、調査期間も短いため、住居者への負担を最小限に抑えられる手法です。

打診調査は外壁を打診棒と呼ばれるテストハンマーで一日通して叩いて調査します。

しかし、赤外線調査はカメラを使用して温度分布を確認するだけなので、騒音の発生が最小限に抑えられます。(ドローンの飛行音は室内からだと換気扇の音程度)

足場を必要としないので長期間養生シートで覆うといった作業もなく、美観を損なうことなく調査できるのも魅力です。

赤外線調査の活用シーン

赤外線調査は以下のような目的で実施されます。

  • 特定建築物の法定点検
  • 外壁補修の時期の把握
  • 大規模修繕の積算への活用
  • タイルが剥落したときの緊急調査
  • 外壁の雨漏れ調査

特定建築物の法定点検

特定建築物の所有者は10年に1度、外壁の全面点検を行い自治体に報告する義務があり、これを12条点検とか法定点検と呼びます。

赤外線調査はこの特定建築物の12条点検との相性が非常によい調査法です。

赤外線法は正しい手順で調査を行うことにより、剥落の恐れのある外壁を低コストで効率よく特定できます。

そのため、外壁の補修が確定してない法定点検では、赤外線調査が最適です。

令和4年1月に国交省より、定期報告における赤外線調査(ドローンを含む)の使用が正式に認められました。

国土交通省告示第百十号

開口遇部、水平打継部、斜壁部などのうち手の届く範囲をテストハンマーによる打診等(無人航空機による赤外線調査であって、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有ずるものを含む。以下この項において同じ。)により確認し、その他の部分は必要に応じて双眼鏡などを使用し目視により確認し、異常が認められた場合にあっては全面打診等(落下により歩行者などに危害を加えるおそれのある部分の全面的な打診等をいう。以下この項において同じ。)により確認する

国土交通省告示第百十号

北九州市のようにドローン赤外線調査で法定点検を行う自治体もでてきており、人手不足などの理由から今後は赤外線法がメインになっていくのではないかと予想できます。

外壁補修の時期の把握

赤外線調査は、いつ外壁を補修すればよいかを足場を組む前に把握できます。

一般的にマンションなどの改修工事は、12年に1度、足場を組んで打診調査を行いその後、改修工事に入ります。

この「定周期保全」は建物の維持として理想的ですが、外壁の劣化が少なくまだ外壁補修工事を延伸できる場合であっても、高額な仮設費を支払わないといけないデメリットがあります。

赤外線調査は足場を組む前に剥落リスクのある箇所を特定でき、補修の緊急性を評価できるため改修時期の把握するのに役立ちます。

以下は参考までに一般社団法人全国タイル業協会のタイル浮きの補修が必要となる基準です。

緊急度低伸縮調整目地で囲まれた区画内に20㎝角以内の浮き・剥離が2個以内
緊急度中50㎝角を超え1m角以内の浮き・剥離
1列あるいは1行の1m以上の連続した浮き・剥離
緊急度高1㎡を超える浮き・剥離
通常レベルの打撃力によって剥落する恐れがある浮き・剥離

大規模修繕の積算への活用

赤外線調査は仮設工事なしで外壁の全面調査を行えるため、大規模修繕前の予算の把握といった目的で使用されることもあります。

一般的に分譲マンションの大規模修繕の際は、手の届く範囲で打診調査を行いその結果をもとに全体の工事費を予想しますが、赤外線調査を導入することでより正確な予想ができます。

ただし、打診調査の完全な代用にはなりませんのでご注意ください。

赤外線調査は天候により結果が左右され、日射が当たらない北面などは浮きの検出精度が下がります。

大規模修繕の積算で赤外線を活用する際は、報告書に赤外線の精度が低くなる壁面や箇所をしっかりと明記する必要があります。

タイルが剥落したときの緊急調査

赤外線調査はタイルが剥がれ落ちたときの緊急調査に適しています。

外壁は浮きが進行するとタイルが剥がれ落ちます。このとき、目には見えませんが他にも剥落の恐れの有る浮きが存在する可能性が非常に高いです。

赤外線調査は、仮設工事が不要で1日~3日程度で外壁の全面調査が可能なため、他に剥落する可能性がある箇所をすぐに特定できます。

剥落の恐れがある箇所を優先的にスピーディーに報告できるため、緊急性の高い調査に適した調査方法です。

ドローンメイトでは、タイルが剥落した際の緊急調査では、剥落の恐れのある箇所を優先的に報告する速報に対応していますので緊急調査の際はご相談ください。

外壁の雨漏れ調査

赤外線調査は、外壁の水分滞留の調査に適した手法です。

雨漏れは建物の内部で発生するため、目視では確認が難しく、打診調査でも検出が難しい劣化現象です。

しかし、赤外線カメラでは、健全部と比較して温度が低いところを可視化できるため、発見が難しい水分滞留の箇所を非破壊で効率よく発見できます。

下の画像はシーリングが破断した箇所から水分が侵入している箇所です。

RC造の水分滞留が確認できる赤外線画像

赤外線カメラは画像として記録が残るため、調査結果を視覚的に確認できるため、修繕が必要な部分を明確に示すことができ、関係者間での情報共有や意思決定がスムーズに行えます。

赤外線調査の方法

STEP
事前調査

赤外線調査のご依頼を頂いた際は赤外線計画を立てるために、必ず現地調査やgoolgemap等のネット調査を実施します。

  • 外壁のおおよその面積はどれくらいか
  • 隣接する建物の距離はどれくらい離れているか
  • 赤外線が適用できる仕上げ材か
  • 撮影の障害物はあるか
  • 陰になる壁面はないか等

事前調査でできるだけ多くの情報を入手することで、良好なデータを取得するための撮影計画を立て、当日の思わぬトラブルを回避できます。

赤外線調査は事前調査や赤外線計画を立てずに、ぶっつけ本番で行うと思わぬトラブルにより調査精度が下がるので、とても大切な工程です。

STEP
赤外線計画

事前調査で集めた情報をもとに、様々なツールを使って赤外線計画を立てます。撮影計画は以下のポイントに留意して立てます。

  • 調査実施期間の太陽高度と太陽方位
  • 周りの高い建物の影による影響の有無
  • 朝の時間帯に北面に日射が当たるか

赤外線調査は外壁に日射が当たり外壁温度が上昇した時に撮影する必要があります。そのため、良好なデータを取得するために適切な太陽高度と太陽方位のタイミングで撮影しなければ精度がでません。

太陽の高度は、春秋・夏・冬でそれぞれ違うため、その建物が最適な時間で撮影できるようにスケジュールを組みます。

夏と冬の太陽の高度の違い
季節によって太陽の高度や方位は変わる

天気は2週間前から3つのサイトを確認し、晴天で日較差(最高温度と最低温度)が大きい日を狙って撮影日を調整します。

当日の朝まで毎日天気予報を確認し続け、最適な気温上昇時に撮影できるようにスケジュールを微調整します。

STEP
現地調査
産業用ドローンを操縦する調査員

赤外線計画で立てた計画をもとに撮影を行います。ただし、当日も気象予報を確認しながら撮影スケジュールを柔軟に調整します。

撮影を行う際は国交省のガイドラインに基づいた撮影を行います。

  • 真正面からの撮影は避け仰角45度以内、水平角30度以内で撮影
  • 25mm/pix以下のの距離で撮影(25/空間分解能)
  • 反射対策で別角度もしくは平行移動で撮影
  • 複数の時間帯で撮影

撮影当日は、手の届く範囲の打診を徹底して行い一つでも多くの劣化情報を取得します。

国交省のガイドラインでは、「各面1㎡の赤外線と打診の結果を照合」と定められていますが、打診調査は時間の限り手の届く範囲をすべて打診するようにします。

過剰な打診調査は建物の劣化の特性を掴むのと、データを蓄積して赤外線技術を向上させるためです。とても大切な工程です。

STEP
画像解析
赤外線の解析作業

事前調査・撮影計画・現地調査をぬかりなく行えば、解析するのに十分なデータが揃っているはずです。

これは非常に重要なポイントですが、赤外線解析は必ず”赤外線計画を立て現地調査を行った赤外線担当者”が解析を行います。

現地で調査した赤外線担当者はその建物の劣化傾向を把握しているため、それを踏まえた上での解析ができるからです。

目視・打診の結果・最も良好な時間帯の赤外線画像、時間帯が異なる赤外線画像、別角度から撮影した赤外線画像等、現地で取得したありとあらゆるデータから論理立てて劣化を特定します。

全ての劣化箇所に確信をもてる根拠をしっかりと説明できるのが理想。赤外線調査は、「調査員によって精度が大きく変わる」と言われますが本当にその通りなのです。

STEP
報告書の作成
外壁調査報告書のサンプル

解析と同時並行で赤外線調査の報告書を国土交通省のガイドラインに基づき作成します。

① 建築物概要(建築物名、所在地、構造・階数、竣工年、仕上げ材の概要、補修歴)
② 調査実施体制(調査会社名、調査責任者名等、資格等)
③ 調査実施日、調査時の天候及び環境条件
④ 赤外線装置の設置箇所(配置図に記載)及び使用した赤外線装置の型式
⑤ 調査対象の外壁面のうち赤外線調査を実施した箇所及びその他の方法で調査を実施
した箇所
⑥ 調査時の適用条件に関するチェックリスト
⑦ 打診との併用による確認を実施した範囲、結果の明示
⑧ 浮きと判定した箇所を明示した外壁調査結果図
⑨ 熱画像及び可視画像

定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)
による外壁調査 ガイドライン

建物の規模や劣化状況によりますが、現地撮影から1週間~1ヶ月程度で報告書を作成して提出します。

赤外線調査の事例

外壁を撮影するドローン
構造RC造7階建(一部S造ALC)
築年数23年
仕上げ材①45角タイル
②45二丁掛タイル
③吹付タイル
総タイル浮き面積14.23㎡
調査方法ドローンによる赤外線調査
手の届く範囲の打診
目視調査

赤外線で撮影したところアール(曲線)の箇所に1㎡程度の剥落の恐れがある浮きを複数確認しました。この建物に限らず、マンションの外壁の出隅部がアールになっている壁面等は非常に浮きやすい傾向があります。

またベランダのシーリング付近、笠木付近、パラペット付近で水分滞留を多数確認しました。下の画像はシーリングが破断した箇所から雨水が侵入したと思われます。

赤外線画像で検出したシーリング付近の水分滞留
シーリング付近の水分滞留

また、一部爆裂している箇所もありました。

外壁の爆裂
コンクリート躯体の爆裂

鉄筋コンクリートは耐久性・耐震性に優れていますが、クラックから水分や空気が侵入することで中性化します。

中性化が進むと鉄筋の不動態被膜が破壊され錆が発生し膨張。その膨張が内部からコンクリートを押し出して外壁を破壊します。

この壁面の近くに海があるため潮風による塩害の影響ではないかと推察されます。

赤外線調査の料金

赤外線調査の料金は、大まかな目安はあるものの、建物の形状や立地条件、仕上げ材などによって調査内容が変わるため、見積りを取るまで正確な金額はわかりません。

ここでは、目安としての相場や見積りのサンプルを紹介していきます。

赤外線調査の相場

赤外線調査の料金の相場は1㎡あたり200円~500円程度です。おおよそ足場の組んでの打診調査の10分の1、ゴンドラの3分の1程度と言われます。

以下は、従来の打診調査や赤外線調査の相場をまとめた表です。

調査面積従来の打診法※1※2赤外線の相場※1ドローンメイト
1,500㎡1,984,500867,000500,000
3,000㎡3,897,0001,332,000780,000
7,500㎡9,742,5003,330,0001,780,000
※1「外壁診断費用に関する調査」内の中央値をもとに算出
※2本足場、ゴンドラ、高所作業車、ブランコの平均値

赤外線調査は建物の形状、立地条件、仕上げ材等によって調査料金が変わります。

赤外線調査の見積りサンプル

赤外線業者に見積りを依頼すると調査内容と金額を記載した見積書を出してくれます。見積もりは有料の業者と無料の業者があります。

赤外線調査は撮影と解析なので建物の規模によって

ドローンメイトの料金は調査面積1㎡あたりの単価は280円前後です。建物の形状や立地条件によって費用は異なります。

RC造調査面積2,000㎡の見積り価格のサンプルです。見積りの内訳の解説はこちら

赤外線調査の見積りサンプル

赤外線調査の依頼の流れ

STEP
お問い合わせ

気になる赤外線調査業者にお問い合わせをします。

ドローンメイトでは、概算見積りや相談を無料で対応しています。

調査物件の住所と建物名をお伝えいただければ赤外線調査に向いているか等判断できますので、気になることがございましたらお気軽にご相談ください。

マンション管理組合様は設計事務所や管理会社を通してのご依頼も対応しております。

STEP
お見積りの提出

お見積りは金額と内容を見て妥当性を判断したり、相場感を把握するのに役立ちます。

「各面を何回撮影するか」「打診調査を併用して行うか」等、その業者の調査精度の判断材料になりますので、気になる点があれば質問してみるのもおすすめです。

依頼する業者が決定しましたら正式に契約して、打ち合わせを行います。

STEP
調査~報告書の提出

報告書の提出はお申込みから最短1ヶ月程度が目安となります。タイルが剥がれ落ちた際の緊急調査などお急ぎの場合はご相談ください。

赤外線調査についてよくある質問

近隣の方や住居者に事前通知は行ってくれますか?

はい、ドローンメイトでは近隣の方や住居者の方にチラシを配布して事前通知を行います。

赤外線カメラはプライバシー侵害の危険性はありませんか?

赤外線調査は撮影対象の表面から厚さ5㎝程度の温度データを取得するだけなので、建物の内部が透過する心配はありませんのでご安心ください。

また、プライバシーについて問題があると判断した場合、モザイク処理を施して報告書を提出いたします。

赤外線の調査員に資格は必要ですか?

不要です。赤外線について独占業務を行うための国家資格はまだ存在しないので赤外線の資格がなくても調査自体は行えます。

しかし、赤外線診断は建築の専門家の視点での補修アドバイスなどが必要です。

そのためドローンメイトでは、赤外線建物診断技能師が構造設計の一級建築士と協力して調査を実施します。

赤外線カメラをレンタルすれば自分で外壁を調査できますか?

赤外線調査には、赤外線についての知識と経験が必要で、一朝一夕でできるものではありません。建設会社がサーモグラフィ―やドローンを補助金で導入したけれど、結局使わずに倉庫に眠っている事例も多いようですので専門家への依頼をおすすめします。

赤外線法の精度面での信頼性は?

国交省は赤外線法について、「定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含むによる外壁調査ガイドラインで実施すれば打診と同等以上の精度」と位置付けています。

ただし、赤外線は打診の完全な代用にはなりません。打診も赤外線も得て不得手があると考えた方がよいです。

例えば、弊社の経験ではALCタイル貼りは打診よりも赤外線の方が検出能力が高かった結果があります。

ただし、赤外線法では0.2mm以下のほぼ空隙を伴わない浮きは、検出できないと言われます。

赤外線法の精度についてはこちらで詳しく解説しています。

赤外線調査はドローンメイトにご相談ください

赤外線による外壁調査は、足場やゴンドラが不要なので、マンションや病院の調査において、大幅なコスト削減が期待できます。

また、ドローンによる赤外線調査は同時にクラック等も調査できるため、従来の地上赤外線法と比べてより積算に活用しやすい調査法となりました。

赤外線法はサーモグラフィ―や解析ソフトの性能向上、撮影技法や解析技術の浸透、ドローンの登場などにより、年々進化している調査法です。

ドローンによる赤外線外壁調査をご検討中であれば、概算見積もりを無料で作成しますのでお気軽にドローンメイトまでご相談ください。

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